唾液は、耳下腺、顎下腺、舌下腺から分泌され、様々な作用があります。その大半は水分によって構成されています。厳密にいうと、唾液は99.5%が水分で構成されており、残りの0.5%が免疫物質や消化酵素など、色々な効果を引き出す成分で成り立っています。

■唾液の無機成分と有機成分
唾液の水分以外の成分は、無機成分と有機成分に分けられます。無機成分には、ナトリウム、カリウム、無機リン、カルシウムなどです。一方、有機成分には、消化酵素のアミラーゼ、免疫物質のIgA、抗菌物質のラクトフェリン、その他、酵素や抗菌作用のリゾチーム・ラクトペルオキシターゼ、ネバネバたんぱく質のムチンなどが含まれます。
唾液には、これだけ多様な物質が含まれているのです。ここからは、唾液によってもたらされる様々な作用について説明していきます。
唾液が有する7つの作用
■消化作用
ヒトは生命活動する為にエネルギー源として、ブドウ糖を活用しています。しかしながら、飲食物の中には、ブドウ糖の単体の成分が、多くは存在していません。実は、炭水化物に含有するでんぷん質の中に結合する形で、ブドウ糖は存在しています。この事から、唾液中に含まれる「アミラーゼ」と言う消化酵素の作用によって、でんぷん質からブドウ糖を分解、抽出して、ヒトは初めてエネルギー源として活用できるのです。よく噛まないで、唾液の分泌が少ない状態で食事をしてしまうと、嚥下してから、胃や腸に負担をかける事になります。
■潤滑作用
唾液には前述したムチンと言う、ネバネバしたタンパク質が含まれています。これは、飲食物を飲み込みやすくしたり、発声、発音を円滑に促したり、ちょっとした刺激から、口腔粘膜を保護する作用もあります。良く臨床で経験する症例として、どんなにピッタリした入れ歯を作っても、義歯が当たって痛いと、訴える患者さんがいます。こうした方は、往々にして唾液が減少し、ムチンによる粘膜のコーティングが少ないケースが多いです。当院では、唾液の量を増やす漢方薬を処方すると、身体に優しい取り組みとして、潤いが確保され、入れ歯が快適に装着できるようになります。
■味覚作用
唾液はよく噛んで、飲食物を分解する事で、舌の上に存在する「味蕾」と言う細胞が刺激を受けて、味覚を感じるようになります。唾液が少ないと、正しく味を甘受する事が出来ないので、人体にとって有害な物質や腐った食品などを見極める事ができないので、食品の味を見極めることが難しくなります。そればかりか、濃い味でないと、飲食ができなくなるので、知らないうちに、塩分などを過剰摂取する事になり、生活習慣病の誘因になってしまいます。
■自浄作用
唾液は食事の時だけでなく、夜間就寝中にも常に分泌されています。絶えず分泌する事で、お口の中の事情性は保たれ、食べ物や歯についた汚れを、キレイに洗い流しています。同時に細菌類も洗い流し、胃の胃酸で殺菌する目的も持っています。こうしてお口の中は、常に清潔に保たれ、健全な口腔環境を維持しています。
■抗菌作用
お口は常に身体の外と交通しており、水や食べ物、会話などを介して、さまざまな細菌が侵入してきます。実は、唾液は細菌の侵入を防ぐ作用を持っています。
これは、唾液中に抗細菌成分が存在しており、特にリゾチームという酵素が存在し、細菌の細胞壁を破壊します。また、ラクトフェリンという糖タンパクは、細菌自体に付着して、細菌の発育を阻害します。その他。IgAという免疫グロブリンも細菌の増殖を抑制してくれます。
以上のように、細菌に対する抗菌成分は、唾液中に10種類ほど存在しており、身体の感染症を防いでいます。
■再石灰化作用
歯は、酸性の刺激を受けると、歯が溶けて脱灰と言う現象を起こします。虫歯菌の増殖によって産生される酸によって歯が奪回を受けて、虫歯が始まります。一方、唾液にはわずかに溶けてしまった歯の表面の歯質を再石灰化させるという作用があります。実は、唾液の中のハイドロキシアパタイトという成分が、奪回を受けた表面に付着し、再び修復して再石灰化してくれる作用があります。
■緩衝作用
歯は酸によって容易に溶解します。これは、飲食物の酸性食品、または、胃酸によっても歯は影響を受けます。唾液には、酸性に傾いたお口の中の環境を、いち早く中性に戻してくれる働きがあります。これ緩衝作用と呼び、口腔内の環境の恒常性を保っています。
歯周病、虫歯、口臭予防には、サプリやうがい薬を使う前に、まずは、ご自分の唾液の分泌を確保する事が、とても重要なのです。
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