私は歯科医師と鍼灸師の両方の資格を駆使して日常臨床を行っています。今回は、その取り組みの一端をご紹介しましょう。
まず、一つ目は、ツボ刺激療法として、「振圧針」(シンアツシン)コノコ医療電機社製を導入しています。電池で駆動し、先端がバイブレーションします。スプリングで押し下がる外筒の内部には、針が植立しています。目的の皮膚にあてがうと、わずかに針部が皮膚に触れて、ツボを刺激します。針は皮膚を貫く程ではないで、出血などは伴いません。でも、経絡敏感体質の方の場合では、こうした刺激でも「響き」を感じる方がいます。時として、治療器を外してみると、皮膚がほんのり赤く変化する場合もあります。
かくいう、私もツボ刺激には敏感なので、この振圧針を皮膚に当てると、ツボの効果が出やすいです。
ところで、歯科治療の中で、一番嫌われる部分は何でしょうか?それは、注射による歯科麻酔なのですね。あの何とも嫌な感じで、ミシミシ分け入って注入される麻酔薬の感じと、それに付随して膨らんでいくような、こわばるような独特の感じがします。
当院では、沈静・沈痛のツボとして、「合谷」に振圧針を2~3分間刺激を与えて、その後に、麻酔薬を注入すると、不思議と痛みが和らぐことが多いです。
抽象的な痛みの変化は、VAS (Visual Analogue Scale)法で評価します。これは、自分が今までで経験した一番痛かった麻酔の痛みを、「10」とした場合、施術者が行った麻酔がどの位痛くなかったかを、イメージで評価する指標で、仮に「2」を評価した場合、五分の一程度、痛みが少なかったことを示し、かなり、苦痛が楽だった事を伺えます。
この評価法で言うと、振圧針をしてから麻酔をすると、皆さん、「5」以下だったと評価してくれます。
体に優しい取り組みで、鍼灸のいいとこ取りで日常臨床に役立てています。