メディアからの取材で、女性週刊誌『女性セブン』の40号と42号の2回にわたって記事が掲載されました。
40号には、日本最古の医学書「医心方」の特集記事が掲載され、主に口臭の部分に関して、コメントを寄せました。医心方は、平安時代中期の鍼の専門家、丹波康頼によって編集された医学書です。そのベースは、中国古典に記載されている200冊以上の文献から、日本の風土や体質に関連する部分を抜粋、引用、整理して、30巻にまとめあげた物です。現代風に言えば、「家庭の医学書」のような感じです。その一部は、現代に通じる養生術も多数掲載されています。
私の専門の東洋医学、漢方、食養生、鍼灸に関しても詳述されており、とても参考になります。
その中には、以前のブログでもご紹介した「枸杞(くこ)の実の効能」も記載されているので、参考にしたい所です。また、口臭に関しての記述もあり、口臭治療の専門家としては、放ってはおけない内容です。医心方の中には、以下のように記述されています。
「大豆を炒って焦がし、熱いまま酢に入れ、その汁を摂取する事」と、記載されています。
これは、学問的にも意味がある事で、大豆の主な成分に「イソフラボン」が含まれています。この成分は、女性ホルモンと同じ働きを有しているばかりでなく、血中コレステロール値の上昇や骨からカルシウムが流出する事も抑制します。この事から、生活習慣病に起因する動脈硬化や、骨が脆くなる骨粗鬆症を抑制する効果が期待できます。
口腔内においては、血中コレステロール値が上昇すると、油取り紙(天ぷら油臭)の様な口臭が出やすいですし、カルシウムが溶出すれば、歯槽骨も脆くなり、歯周病を誘発し硫化水素(温泉硫黄臭)の臭気が発生してきます。この事から、大豆抽出成分を摂取する事には、口臭予防に十分効果があると考えられます。
加えて、イソフラボンがもつ強い抗酸化作用により、老化の原因となる活性酸素を除去してくれる効果があります。この事で、歯周組織の新陳代謝が高まって、歯肉・骨面のターンオーバーが正常に機能し、歯を健常に保ち口臭を予防します。
さらに、酢の中で煮出す事で、さらに有効成分を抽出しやすくなる工夫が施され、酢自体にも抗菌・殺菌作用、唾液分泌作用があるので、一石二鳥と言う訳です。個人的には、大豆を炒って硬くなった豆粒を、ガリガリ噛み砕いて食べる事も有用なのではないか?と、考えていますが、そうした記載はないようです。
42号には、『冬の汗は夏の2倍くさい』という記事の中で、「スマホ型口臭」と「ダイエット臭」の部分が掲載されました。
スマホ型口臭は、私が提唱した概念で、スマホをやっている時に臭気が出る現象です。若い人だからと言って油断してはいけません。過去のブログ記事でもご案内しましたが、スマホをいじっている時は、口臭が出やすい三大要件を満たしているのですね。
1.少しうつむき加減でスマホを操作するので、唾液腺が圧迫を受けて唾液量が減少する。
2.ゲーム、メールによる過緊張状態で、交感神経が優位になり、結果的に唾液が減少する。
3.殆ど、誰とも喋らずにいると、咀嚼筋や口輪筋が動かず唾液腺が刺激を受けないので、唾液量が減少する。
以上のような流れで、唾液量が減少し、口臭発生菌の方が優位になって、ニオイの出やすい口腔内環境に傾いてしまうのです。
加えて、東洋医学的に唾液量が減少しやすい体質として、
カラカラ乾燥タイプの「陰虚体質」
カッカッ熱化タイプの「胃熱体質」
ネバネバ粘張タイプの「痰飲体質」
クヨクヨ抑鬱タイプの「肝気鬱結体質」などが加わると、相乗的に益々臭いが出やすくなってきます。30分程度スマホをいじったら、10分程度は休憩し、前述した顎を上げて伸びをしてリラックスし、唾液分泌体操、ツボ刺激療法を取り入れて、唾液の分泌を促すと良いでしょう。