実は、「味覚」も5つの属性があります

 

東洋医学や漢方では、飲食物の味の種類を陰陽五行説で分類して、5つの味に分類しています。これを、「五味」といいます。味にも、「気」が宿っているんですね。家族が気持ちを込めて作った一家団らんの食事と、コンビニ弁当では、気のレベルが違うのではないか?と、私は睨んでいます。

五味のバランスは、1年の四季折々で、その季節に見合った味付けが重要になります。いつものように、陰陽五行の相対表から、「五味」の部分を引用してみましょう。

それぞれの解説を以下に示します。

 

●「酸っぱい味」の持つ意味

五行の「木」は、季節では「春」に相当します。動物は冬眠から目覚め活動をはじめ、植物は新芽が芽吹き始める春は、一年の中で、最も自然のエネルギー(気)が高まる季節です。

春先のポカポカした陽気が増えるにつれて、体内でも気血の流れが活発化して、新陳代謝がどんどん活性化すると共に、気のエネルギー消費量も増加します。

これは、冬の間に貯えていたものを使い始める季節と解釈しても良いでしょう。その際に、過去の1年間で蓄積した「毒素」を解毒する季節ともいえます。

ここで注意しなければならないのが、病気の素因も動き始める事です。今まで大人しくしていた病気が再発したり、持病が悪化したりと、気持ちがその変化に追いつかないと、精神不乱になったりします。春先に変質者が増加するのもこうした原因が隠れています。この時期に、体内の気をスムーズに巡らせておくと、不思議とその1年間は、大きな病にならないで養生できます。

自然界においても、猫や犬も盛りがつきますが、ヒトの身体でもホルモン代謝やバランスに変化が起こり、女性の場合生理周期が不安定になります。また、アレルギー体質の人は、些細な刺激で影響を受け、アトピー性皮膚炎、花粉症なども起こりやすくなります。

 

この時期に酸っぱい味を摂取すると、大事に至らないので、以下の食材を接収すると良いでしょう。リンゴ、キウイフルーツ、マンゴー、パイナップル、レモン、すもも、酢 など。


 

●「苦い味」の持つ意味

五行の「火」は、季節では「夏」に相当します。「炎天」「炎暑」の言葉があるように、ギラギラした暑い炎をイメージします。日中、長時間外出していると、体が重だるくなり、慢性疲労になります。いわゆる、「夏バテ」ですね。これが、もっと進行し、身体のミネラルバランスを失調すると、熱中症になるので、注意が必要です。

東洋医学では、以前にも解説した「暑邪」(しょじゃ)、「熱邪」(ねつじゃ)と考えます。

加えて、島国で水資源が豊富で、高温多湿の日本では「湿邪」(しつじゃ)も抱えやすく、夏場に湿疹やあせも、食欲不振、夏型口臭も出やすくなります。

 

夏にスーパーの食品コーナーで、旬の季節になるウリ科やナス科の野菜は、身体に溜まった余分な熱邪を除去して、不足しがちな水分を補ってくれます。特に「苦みの食材」「アクを含んだ食材」は、心の働きを鼓舞して、身体に熱がこもるのを防いでくれます。ただ、食べ過ぎると必要以上に冷します。一緒に、体を温めるスパイスや辛味でバランスを整えましょう。また、夏場は緑黄色野菜も豊富です。紫外線によるシミ、日焼けなど、肌を健常な状態に保ちます。

この時期に苦みのある食材を摂取すると、厳しい夏場をしのげます。緑豆、豆腐、クレソン、きゅうり、冬瓜(&皮)、ゴーヤ、ズッキーニ、ナス、レタス、せり、セロリ、白菜、スイカ、こんにゃく、粟(あわ)、大麦、アサリ、しじみ、蟹などがおススメです。 

 

●「甘い味」の持つ意味

五行の「土」は、季節では「土用」に相当します。土には季節はありません。土用の丑の日が一番有名ですが、四季のうち、季節の変わり目にそれぞれ存在します。言うならば、土用の日は、次の季節へ切り替わるためのクッション材の役目をします。食材においては、例えば果物などは、熟成が進み腐熟が進行すると、甘味が強くなります。また、牛肉やお寿司の食材(タイ、マグロ、はまち)も一晩熟成した方がうま味が出ます。

五行において、土は脾(胃)です。ヒトの身体においては、消化活動全般に該当します。脾(胃)は栄養、思慮をつかさどります。若い女性の方が、恋愛などで心配事が増えて、思慮を病むと、何故だか甘い味が食べたくなるのも、こうした事に起因しています。

土は万物を生み育て、そして生涯を終えて滅すると、再び土にかえります。土用の日は、いわば物事の変化に適応するための期間です。季節の変わり目に体調を崩しやすい方は、この変化によって『自然界の気』が希薄になる事で、身体が重だるく感じるのです。

 以上の事から「脾(胃)」は甘い食材で養われ、生ものや冷たいもの脂っこいものを嫌います。 

野菜や豆類、穀物などは「脾(胃)」に優しいですが、逆に白砂糖や甘みの強い果物を取りすぎると負担が増えます。例えば、穀物、豆類を煮物やおかゆにして摂取すると良いでしょう。

 

 

●「辛い味」の持つ意味

五行の「金」は、季節では「秋」に相当します。秋の食材は、どちらかと言うと辛味のものが出回ります。例えば、長ネギは秋が旬です。お蕎麦に付いてくる小皿に盛られた、長ネギの刻んだものやワサビは、「薬味」と言われています。

食材の中でも、薬理効果が高いのですね。

 

陰陽五行説では、金は肺に相当します。昔より、長ネギを湯がいて首に巻いておくと、風邪を引かないと言う民間療法がありますが、先人の知恵として、長ネギは、肺に作用して、風邪を引きにくくする事が、経験的に解っていたのでしょう。同様に、冬場になると、呼吸器が弱くなる方、喘息、気管支炎になりやすい方は、普段の食生活に、長ネギを多く取り入れれば、賢く養生が出来ます。

 

秋は、秋は春から夏へと成長した草木が実を結び、ヒトの身体や気の流れも、一年の中で最も落ち着いてきます。

春先は、新芽も出てきて、私達の生活もワクワクする気分になるのに対し、街の景色も紅葉に染まり、ジックリ物事を考えたり、悲しみ、憂いの感情が出てきます。

 

非常に繊細で感受性が豊かになる季節でもあります。よく、「読書の秋」とも称されますが、東洋医学的に見ても、とても理にかなっている訳です。肺に影響するといわれています。

ここで言う『辛味』ですが、唐辛子のようなスパイシーな刺激物ではなく、むしろ、生姜や山椒の様な、ピリっとした味の方をイメージすると良いでしょう。こうした、辛味は身体の内側を温め、同時に肺を潤します。

 

 

●「鹹(しおからい)味」の持つ意味

五行の「水」は、季節では「冬」に相当します。この、しおからい味は、塩分の事ではありません。現代の解釈で言えば、ミネラル成分の事を指しています。古来の人は、海水を天日干しにして、ミネラル塩を作っていました。この中に含まれる、単なる塩化ナトリウムの様な塩味ではなくて、むしろ、その中に含有する、微量元素の方に着目していたのではないかと考えています。

冬は秋からの始まった陰気がさらに増えて、逆に陽気は減少傾向に傾き、冬至をピークとして、夜が長くなっていきます。動物も冬眠して活動を制限して体力を蓄えるように、ヒトの活動もエネルギー消費量が少なくなり、何となく眠くなります。

 

この事から、冬は身体を休息させて、身体を温める黒い食材、海藻類を積極的にとり、冷やす特性を持つ生野菜や白砂糖を控えていきます。また、冬は夜の時間が長くなるにつれ、物思いにふけったり、恐れの感情や心配事が出やすい季節です。

東洋医学では、冬は腎に影響を及ぼし、情緒的な活動と水分代謝に関係してきます。よく、お化け屋敷で、とてもビックリした時に、オシッコをちびってしまうのも、恐れの感情が瞬間的に腎に作用し、尿を引き留めるバルブが緩んでしまうからです。

 

おススメ食材は、海老、かぶ、ねぎ、大根、黒ごま、生姜、黒木耳(きくらげ)、山椒、黒豆、にら、椎茸などを鍋料理や煮付けにして摂取します。