数年前、NHKの番組「クローズアップ現代」の番組で、「海のマイクロプラスチック汚染」という放送が有りました。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3725/1.html
その時は、環境問題と言う事で、ボンヤリと聞き流していましたが、実は、私の専門分野でもある歯科領域にも微妙に関係してくる部分なので、ここで改めて、考察を加えておきたいと考えました。
海洋汚染などの原因が、実は、スクラブ洗顔料やマイクロビーズ入り歯磨き粉が関係しているのです。加えて、そうした物質が身体の中に取り込まれると、健康にも影響が出てくる事が、近年指摘されています。
マイクロプラスチック汚染とは、何なのか?について、考察してみましょう。
一般的には、海に浮いている比較的大きな、プラスチックごみやペットボトルが、粉砕されて、1~5mm程度の大きさの「マイクロプラスチック」になって、海に流れ、それを海洋生物が、誤って食べてしまい、食物連鎖に影響を与えていきます。 それよりも、さらに細かいものを、「マイクロビーズ」と分けて考える場合も有ります。
マイクロプラスチックやビーズは、ぶつかり合う事で、細かく粉砕される事は有っても、海上で分解される事はありません。ずっと、そのままの形で残存し続けます。
【海洋生物に対する大きな悪影響】
出典:一般社団法人環境金融研究機構から引用します
小さな海洋生物がマイクロプラスチックを食べ、その魚を大きな魚が食べることで、食物連鎖により、徐々に汚染が広がり、最終的に人体へも影響が出る事が懸念されています。
●まず、栄養素を含まないマイクロプラスチックを食べる事で、海洋生物は満腹になってしまい、発育不足により、生態系のバランスが崩れるという心配も。
●食卓で食べる小魚の中にも微小のマイクロプラスチックが含まれている可能性があり、人体の中に直接取り込まれます。例えば、そのまま、頭から食べるシラスやシシャモ、エビの唐揚げ、小鯵の天ぷらなどです。
●マイクロプラスチックの表面には、色々な有害物質が吸着しやすい背景。
実際に、魚、貝、水鳥などの体内からプラスチックから溶け出た、有害物質が検出された報告も出ています。その中には、ダイオキシン類やPCBなどの発がん性物質も含まれています。これらの有害物質は、乳がんや大腸がんを引き起こす原因になる可能性もあります。
その他、生殖異常、内臓疾患、ホルモン異常との因果関係も指摘されており注意が必要です。さらには、不妊や奇形、早産・未熟児の可能性が高まるといわれています。
ここで重要なのは、身体の中に取り込まれた有害物質は、子どもや子孫へ受け継がれる「継世代毒性」がある事です。
それでは、何故、マイクロプラスチック汚染が、いつの間にか広がってしまったのでしょうか?
ここに一つの報告が有ります。
2014年、国連環境計画の席上、発表された「世界で新たに生じている環境問題」の報告書には、マイクロプラスチック自体は、プラスチックごみやペットボトルよりも、歯磨き粉、洗浄ジェル、洗顔用スクラブ洗剤などに含まれるマイクロビーズが家庭で使用され、生活排水から海洋に流れ、この問題に拍車がかかっていると、報告が有りました。
実は、マイクロビーズは、水に浮く性質があるので、ろ過をする為の排水処理の過程を通過し、下水処理施設を通り越して、河川に流れ、最終的に海洋に漂着します。
アメリカでは、いち早く対応に乗り出し、2014年2月、ニューヨーク州は、マイクロビーズを使った製品の販売を禁止する法案が提出されました。さらに、2015年10月カリフォルニア州、コロラド州・コネチカット州など、全米の8つの州で、2018年末には全面禁止する法律も制定されました。
その他、イギリス、フランスなども追従して、自然素材に切り替えるという考えを発表しています。
日本でも、政府が法案を提出する前に、例えば「花王」などの化粧品メーカーは、いち早く対応に乗り出し、徐々に身体に優しい素材に変換している所です。政府ももう少し早く重い腰を上げて、対策に乗り出してもらいたい所ですね。
●マイクロビーズが入っているか否かの…簡単な見分け方
一般的には、洗顔料、ボディソープ、歯磨き粉などに含まれています。スーパーマーケットなどで、これらの商品を手に取って、購入を検討する時に、成分表示欄の所に、「マイクロビーズ」とは記載されていません。ここは、注意が必要な部分です。
それは、
・ポリエチレン
・ポリエチレン末
・ポリプロピレン
などと表示されているので、チェックする事をお勧めします。
スクラブ洗顔をした時の、私の体験談ですが、以前こうした商品を使っていた頃は、何故か、洗顔後、目がゴロゴロして、しばらくの間、目が充血し、涙目になる事が多かったのですが、その後、こうした商品の購入を控えた所、目の違和感は、すっかり出ないようになりました。もしかしたら、ツブツブが、目の中に入り、角膜や眼瞼結膜に傷をつけていたのかもしれませんね。
人間が作り出した汚染は、結局は、巡り巡って人間に「ツケ」が及んでくるのです。
私達一人一人が出来る事は、まずは、「マイクロビーズが入っていない商品を選ぶ」事です。
少しだけでも良いので、頭の隅っこに気に留めておいて下さると嬉しいです。