我が家にやってきた新しい「炊飯器」は、ただ物じゃなかった

今年の春から新生活が始まり、息子が寮生活になった事を受けて、今まで、我が家で使っていた生活用品を息子にあげて、その代わりに、久しぶりに家電用品を新品に買い換えました。

 

その中で、なぜか?一番態度がでかいのは、「炊飯器」です。

 

なんと、この新参者の炊飯器……炊飯ジャーとして「保温機能」が備わっていないのです。

 

カミさん曰く、これが、最新式なんだそうです。しかも、購入するまで、半年待ちだそうです。もう訳わかりません。昭和初期の薪で炊いていた時代に戻った気分です。

 

よく考えてみて下さい。保温機能がないので、炊き上がったら最後、お釜の中で、ご飯はどんどん冷めていきます。何とか炊飯タイマー機能は付いているので、炊きあがる時間はセットできるのですが、それでも、相当不便です。何故かというと、全部の食事が整い、おかずがテーブルの上にセッティング完了のタイミングを見払って、炊き上がれば問題ないですが、レストランとは違うので、いつも、そんなにピッタリとはいきません。

 

サラダがダイニングテーブルに並び終わり、カレーの準備が整っても、ご飯が出来上がるまで「おあづけ」状態です。私などは、我慢できずにご飯無しカレーを、スープのように食べ始めてしまいます。カレーも半分くらい食べ終わった頃に、ようやく、炊き上がりを知らせるメッセージが鳴り、ご飯がやってきます。

 

この炊飯器君は、新参者のくせに、いきなり我が家のライフスタイルを激変させる位の好待遇を受けるようになり、わが物顔でキッチンに鎮座しています。

(ちなみに、アフェリエイトやステマの様な内容は書きたくないので、メーカー名などは伏せておきます。)

 

結局時代は、一周めぐって、釜戸で炊いていた炊飯の時代に戻って来たのです。

 

それでは、なぜこの炊飯器には、保温機能がないのでしょう?これには、メーカーなりにちゃんとした理由があるようです。

 

【お米の糖化】

チョット無精をして、2日間くらい炊飯ジャーの中で保温機能のまま、ほったらかしにした経験はないでしょうか?我が家では、共働きでもあるので、今までは、炊飯ジャーの中で保温されたままのご飯を、翌日も平気で食べていました。

 

その中で、ご飯が、黄色~茶色に変色した経験はないでしょうか?

実は、この時、ご飯には「糖化」と言う変化が起きています。

 

この糖化は、メイラード反応とも言われています。簡単に表現すると、白いパン生地をオーブンで焼くと、出来上がったパンの表面は、茶色く変色して、独特な良い香りが出てきます。この時、パン生地の中に含まれる…、 

  1.アミノ化合物(アミノ酸など) 

  2.還元糖(ブドウ糖、果糖など)が、 

酵素の力を借りないで結合した事で、糖化の状態に変化しています。そして、この 最終産物を、終末糖化産物(Advanced glycation end products:AGEs)と呼んでいます。

 

実は、この終末糖化産物のAGEsは、食品の加熱調理だけではなく、身体の中に存在する糖質とアミノ酸においても進行しています。

 

今までは、AGEsは単なる老廃物としてとらえていましたが、生体内でタンパク質が変性を受ける事で、最終的には骨格タンパクの変質や、酵素の活性低下にも影響を及ぼしている事が解ってきました。

 

生体で生成されるメイラード反応産物(糖化産物)は、グリコアルブミンやヘモグロビンA1c(HbA1c)が上げられます。ここに来て何となく、聞いたような名前が出てきましたね。このグリコアルブミンは、血清中に最も多く存在するタンパク質のアルブミンとグルコースが結合した糖化産物です。健康診断などで、糖尿病を判断する指標として、過去2週間程度の血糖値を反映するマーカーとして用いられているので、馴染みが深いですね。

 

一方で、食品に含まれ身体の中で生成されたAGEsが、どの様な形で健康に影響しているか?に関する研究も積極的に行われています。

 

このAGEsは、コーヒー、ビール、味噌や醤油などに多く含まれ、茶色い褐色色素、香料、味覚成分として、非常に重要な部分もある反面、近年、こうしたAGEs高含量の食品を、継続的に摂取することで、糖尿病の悪化や老化促進、老化関連疾患(認知症、動脈硬化など)の発症に関与している事が、近年解ってきました。

 

その機序は、まず摂取されたAGEsが、生体内でAGEs受容体である、Receptor for AGEs(RAGE)に認識されます。ここで重要な事は、この受容体であるRAGEは、血球成分の単球や免疫機能のマクロファージ、神経、腎臓、血管内皮細胞の場所で炎症を起こしたり、酸化ストレスを上昇させるのです。この事により、血管の内壁を傷つけたり、動脈硬化が進行したり、糖尿病を誘発する可能性があるのです。

 

しかし、一方でメイラード反応生成物は、食物繊維と同様の働きをもち、ビフィズス菌などの腸内善玉菌の炭素源となる事も指摘されているので、全てが悪い訳ではなさそうです。

 

こうした背景を受けて、茶色く糖化したご飯を作らせないために、我が家の炊飯器には、あえて保温機能がないのです。しかも、この考え方が消費者に浸透し、隠れヒット商品になっているのですから、どこにお宝が眠っているのか?全く解りませんね。

 

★★よかろう…理屈は解った。★★

 

もう少しの間、我が家の台所の「王様」の地位を与えておこう。1年後にお払い箱になるかどうかは、「本当に美味しいご飯が炊けて良かったね」と言う評価が出るまで、もう少しの間、執行猶予を与えておこうと思います。