頭蓋骨の重さは、体重の10分の一と言うのが標準です。体重60kgの方であれば、6キロ前後の重さになります。
しかも、背骨の頚椎と言う首の骨が頭蓋骨と関節を成しているのですが、頭蓋骨の底部のど真ん中で支えている訳ではありません。頭蓋骨の下でかなり後ろの所に、大後頭孔と言う大きな穴が開いており、そこが、唯一の接触点です。最初からバランスが悪いのです。
その為に、頚椎は手前に湾曲させることで、何とか重心を真ん中に寄せるようにバランスを取ろうとしています。また、この湾曲が、クッションの緩衝剤として機能し、首・肩への応力の集中を防いでくれています。
その為に、どうしても前屈みの姿勢になりがちです。スマホの操作をすれば、なお顎を引いた状態になるので、首への負担は、ますます増える事になります。
本来の頭蓋骨の重さの3倍以上ものストレスが頚椎にかかる事から、長時間のスマホの操作で、「スマホ疲れ」が起きてきます。
この「スマホ疲れ」は、やがて、以下のような体の変調を招くことになります。
① 頸椎に負担をかけてしまい、頭頚部の椎骨動脈の圧迫を受けて、脳内の血流が悪くなることで、「フワフワめまい」が出てきます。本物の脳血管障害による「回転性のめまい」出ない所が鑑別点です
② 頭蓋骨を支える頸椎に応力の集中が及ぶと、頭を支えている筋肉にもストレスを与える事になります。筋肉が披露してくると、頑固な肩こり、耳鳴り、しびれの症状が出てきます。
③ 長時間のうつむき姿勢で、唾液腺は圧迫され、表情筋、咀嚼筋は使われなくなり、交感神経過緊張により、唾液の分泌が阻害され、口臭の発生、味覚障害、誤嚥性肺炎などが出やすくなります。
実は、東洋医学では健康な人の頭には、清らかな水で満たされ、意識を清明に保っていると考えられています。それとは反対に、濁って汚れた水は下方へ降りて、お小水として体の外に排出されています。そこに湿が入り込むと、スムーズに流れていた水が停滞し、清い水が頭に上らなくなり、濁った汚い水が残ります。清い水が足りなくなることによって脳圧が下がりすぎ、頭痛を起こすと考えられます。
鍼灸師の資格を取得して16年、顎・顔面領域のツボに関しては、特に研鑽を深め、歯科領域の症状に応じて、色々な効果の見込める「ツボの存在」がある事が解ってきました。
今回は、特に「スマホ疲れ」を主治するツボをご紹介してみましょう。
●「天迎香」(てんげいこう)のツボを刺激する
「鼻の横を押す」と病気が治る…の著者である萩原秀紀さんが考案したツボです。本来の「迎香」は、鼻の鼻翼の両サイドの皮膚上に一対存在していますが、「天迎香」は、奇穴に分類され、歯肉の所に存在しています。私たち歯科医師にも関連性の高いツボです。
そこを、「痛気持ちイイ」位の力加減で、やや下から情報に向かって、両手の人差し指を使ってマッサージするのです。主に、鼻つまりや自律神経の乱れを整えるツボになります。普段から、「スマホ疲れ」を抱えている方は、「ツーン」と響くような痛みを感じるはずです。お風呂上りやスマホを長時間使用した後に天迎香をほぐしておくと、不思議と、頭の中がスッキリしてきます。
●「完骨」(かんこつ)のツボを刺激する
こちらは、頭の後方に位置するツボで、別名、「安眠のツボ」とも言われています。私は、年子で子供を授かりましたので、赤ちゃんの時は、子育ても大変でした。夜泣きをしてむずかる我が子に対し、首元を片手で支えながら、親指と人差し指で、このツボを優しく揉みほぐすと、不思議とスヤスヤと眠ってくれるので、随分、助かった記憶があります。正しい位置関係は、耳たぶの後ろに、「乳様突起」と言う、骨の出っ張りがあります。その後下方陥凹中に位置しています。スマホ疲れによって引き起こされる、眼精疲労、精神の過緊張、興奮によって起きる不眠などに効果があります。
天迎香も完骨のツボも、左右一対、計4カ所あります。
この位置関係は、
赤丸…完骨
青丸…天迎香
になります。
左右対称で一対、反対側にもあるので、頭を囲むように4つの点が、配列されている事が解ると思います。
デスクワークをした時の目の疲れや、ストレス、イライラ、過緊張などにも効果が見込めるので、普段から揉み解しておくと良いでしょう。
さらに、この疲れが、肩周囲の「肩甲骨」や「僧帽筋」に波及した時には、何と言っても、
「肩井」(けんせい)のツボがおススメです。(赤色)
ここは、肩凝りのツボの特効穴です。
場所の取り方は、簡単です。
第7頚椎「棘突起」(黒色)と
「肩峰」を結んだ線の中間点になります。(青色)
●第7頚椎棘突起は、頭をうなだれて、「イヤイヤ」と、頭を左右に動かしてみて下さい、首の付け根で、黒丸あたりに「動かない」出っ張りが有るはずです。そこが、第7頸椎棘突起になります。
●肩峰は、肩の峰と書くように、肩を触った時に、背中側にコリコリした出っ張りがあります。
「肩井」は、その2か所を結んだ、中間点になります。
普段から、親指の腹で、グイっと押せば、肩凝り、片頭痛、首の疲れが和らぎます。おススメのツボです。
スマホの連続使用が、30分を超えたら、一度、スマホを置いて、顎を上げて背伸びをして、今回のツボに刺激を与えれば、「スマホ疲れ」もだいぶ和らぐと思います。是非、お試しくださいませ。