毎年、お正月になると、お餅をのどに詰まらせて、救急車のお世話になるケースが出てきます。今年も、元旦だけで東京都内で10件発生してしまい、不幸にして1名の方はお亡くなりになってしまいました。
私も今年還暦です。以前よりも食事中に飲食物を誤嚥する機会が増えました。
なぜ、のどに食材を詰まらせるのか?その仕組みを考えると共に、口臭との因果関係も考察してみましょう。
まず、口に入った飲食物は、口腔内で咀嚼されて細かく粉砕されたのち、嚥下の動作により、食道の入り口を通じて胃の方へ流れていきます。ところが、食道の入り口のすぐ近くには、呼吸をする為の「気管」の入り口(喉頭)が備わっています。普段、私達が呼吸をしている時は、気管の入り口を塞ぐ「ふた」は、反射的にしっかり閉じています。毎回、食事をする度ごとに、呼吸と嚥下は、バトンタッチしながら無意識に、閉じたり開いたりして、それぞれの役目を担っています。
しかし、この仕組みがうまく作動しない事があるのです。この反射のタイミングがズレたり、開閉が不十分だと、飲食物が気管を通過してしまいます。これを一般的には、「誤嚥(ごえん)」といいます。誤嚥になると、吐き出すための動作として。激しい咳き込みがおきます。
特に誤嚥が起きやすい、食事中の所作があります。
1.飲食物を飲み込むタイミングで、会話の受け答えをしない。
2.顎を上げて、大きく口を開けて、蕎麦やうどんを複数回にわたって「すする」時に、途中で息継ぎの為の呼吸を交えない。
3.粘張性のある大きな塊の食材を、一気に丸呑みで嚥下をしないなどです。
【餅を詰まらせる原因】
実は、のどの奥には、飲食物が一時的に留まってしまう「クボミ」が、二カ所もあります。
① 喉頭蓋谷…気管の入り口に位置して、気管に入らないようにする「ふた」の役目をするクボミ
② 梨状陥凹…食道の入口にあるクボミ。
ここに飲食物がハマり込むと、やがて、溢れ出てしまい、気管の方に流れ込みやすくなります。特に、麺類やお持ちの様な、息を吸いながらすする動作が必要な食材は、塊となって、気管の方に吸い込まれてしまうのです。
特に、流動性の高く、ツルツルして固まり感のある食材(ひとくちゼリー、お味噌汁、麺類など)は、少しの姿勢の変化で、容易に気管の方へ誤嚥してしまいます。特にお餅は、粘り気があり、一旦気管を塞いでしまうと、容易に吐き出せないので、呼吸困難になってしまいます。
対処法は、救急車をすぐ呼ぶのと同時に、出来れば、「腹部突き上げ法」(ハムリック法)や「背部叩打法」を試すと良いでしょう。(それぞれの手技は、ネット検索で色々出てきます)
顔色が真っ青になり始めたら、心肺蘇生法、気道の確保、一分一秒を争うのであれば、「気管切開」も最後の手段になります。
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ところで、口臭治療をしている際に、患者さんに問診をする時、
「アナタの口臭は、何処から来ていると思いますか?」と、お伺いする時があります。
「普段、胃もたれがあるので、胃から来ていると思います」と、受け答えする方がいます。
実は、胃から込み上げてくる口臭と言う概念は、上記で解説した通り、あまり気にする必要が無く、誤った通説だと思っています。
普段、平常時で安定して呼吸をしている時は、気管と食道に存在する弁は、しっかり閉じているので、口腔と胃は、弁を介在して寸断されています。胃からに臭いは、ツーツーでは上がってこられない構造になっているのですね。
それでは、ハ~と息を吐いた時に出てくる臭いは、何処から来ているのでしょう?
実は、肺から出ているのです。
例えば、腸内でインドール・スカトールなどの発酵臭が出た場合、その臭気は腸管壁を透過し、門脈を伝わって、肺でガス交換されて、巡り巡って再び呼気中に臭いとして出てきます。
オナラが臭い人は、口臭も臭い可能性があるのです。
その他、
糖尿病が悪化すれば、ケトン体が血流に溶け出し、「バナナ臭」が呼気中から出てきます。
腎臓病が悪化すれば、「魚臭症」、
食事をとらないだけの無理なダイエットの場合は、血流に脂肪酸が溶け出し、「天ぷら油臭」が、口臭や体臭に出てきます。
ゲップをしない限り、胃からの臭いは、あまり気にする必要がありません。