同じ臭いと言うキーワードでつながる、松林宏治(以下、刑事の略)さんと、久しぶりにビジネスミーティングしました。
刑事とは、本当に、何でも相談できる間柄です。
臭いについて、ディープな打ち合わせをしました。
その中で、刑事にとって、一番思い出に残る、一番好きな臭いって何なの?と聞いた頃、
「子供の頃に親と一緒にプロ野球の球場に行った時に食べた、『味噌カツ』の臭い」との回答がありました。
その後に続いて、その時の記憶として、球場の熱気、歓声、水銀灯の明るさなど、全ての情景を思い出し、スラスラと説明してくれました。
臭いの記憶と共に、その時の場面がフラッシュバックしているのです。
ちなみに、私の場合は…、
子供の頃に、有料バスが出発する時に、エンジンをふかせて吐き出した、排気ガスの臭いです。
実は、私の自宅の目の前に、バスの停留所があります。そして、その先には、勾配のある坂道があるので、走り出したバスは、エンジンをふかす必要がります。その時に嗅いだ、黒鉛混じりニオイです。
思いっきり肺まで吸い取った時に感じた、シンナー臭い、揮発性ガスの臭いが心地よかったのです。思わず…「ウーン、良いニオイ」と口走った自分の声まで記憶に残っています。
その後に、母親がつぶやいた、
「そんな臭いを嗅いだら、体に毒だよ、早くこっちに来なさい!」と言う声まで、その時の情景も含めて、ありありとした記憶として残っています。
なぜ、臭いの記憶と覚える記憶とは、マッチングが良いのでしょうか?
それは、脳の構造にヒントがあります。実は、ヒトの五感の中で、視覚・聴覚・味覚・触覚は、頭蓋骨の後ろの底面に開口する「大後頭孔」から脳内に入り、その信号は、視床を経由し、大脳新皮質と言う脳の部位で情報処理されます。大脳新皮質は、入力された信号の「良い」「悪い」の判断を情報処理するだけなので、「覚える」「記憶する」と言う行為は苦手です。
これに対し、唯一、嗅覚だけは篩骨篩板と言う脳の前方から、ダイレクトに扁桃体の海馬という「記憶」と「感情」を処理する部位に接続されます。この事から、ニオイを嗅いでいた時に、同時に行っていた生活動作は、通常よりも効率的に記憶情報として残る事になります。
大脳新皮質は、大きく4つの領域に分かれています。前頭葉は、物事の判断や論理的思考、計画に関係し、頭頂葉は、運動と皮膚感覚、側頭葉は、見たり聞いたりしたものが、何であるかについての認識、そして、後頭葉は視覚の処理をしています。
その中に、臭いの情報を処理する場所は、含まれていません。
これを学術的には「プルースト効果」と言います。
私は、14年間で4000人の口臭患者の臭いを嗅ぎ分けていました。その中で、口臭を言語化して記録に残す時に、その臭いの記憶を思い返すだけで、不思議な事に、同時に口臭を嗅いでいた時の患者さんの名前、天気、院内ラジオの音楽なども鮮明な記憶として思い出す事に気づきました。
もしかしたら、記憶情報を呼び覚ますトリガーは、嗅覚刺激なのかもしれません。
刑事にも、この事を相談したら、「絶対に相関はあると思います!」と言うお墨付きを得たので、俄然、やる気度が増してしまいました。
来年にかけての、不思議好奇心を満たすテーマが見つかりました。
話が大きく進展したら、このブログでも紹介したいと考えています。