歯科検診に行ってきた…歯科用探針の使用の是非を問う

 

8月某日、鶴見区保健所で実施している、歯科検診に出向いてきました。今回は、3歳児検診です。

 

鶴見区の保健所には、電気自動車向けの普通充電スポットが設置しているので、事前に予約をしておけば、検診している間に「無料で」電気を拝借できるので、とても有り難いです。

 

さて、歯科検診に従事して30年以上、我が国の歯科事情を考えてみると、本当にお子さんに虫歯が少なくなりました。

 

私が初めて歯科検診に従事した35年前は、鼻たれ小僧で、お口の中は味噌っ歯(ランパント・カリエス)の子供が沢山いました。当時のイメージでは、10人の子供の検診をすれば、一人は必ずいました。

お母さんに聞いてみると、「夜泣き止まないので、やむを得ず、乳酸菌飲料を飲ませてしまいます。どうせ、生え変わるんだから…問題ないでしょ!」と言う受け答えをします。

 

「そりゃぁ…虫歯になるよなぁ」

 

その場は、検診するだけなので、言いたい事をぐっとこらえて、次のお子さんを見るようにしていました。

 

それが、時が流れて35年、お母様方の歯科意識は確実に上昇し、現在では、殆ど虫歯は消え去ってしまいました。むしろ、自分の子供が、全く虫歯が無くてキレイな事を褒めてもらう為に、歯科検診に来る保護者の方もおります。もちろん、お母様の身なりもオシャレで、普段からの衛生観念が行き届いている事が伺えます。

 

また、近年では、お父様が検診に参加してたり、外国人の方が来場する場合も増えました。そして、なんと保健所の事業の一環として、通訳のボランティア帯同で来て頂けるので、安心して検診が出来るように整備されました。スゴイ進歩だと思います。

 

その中で、近年、歯科医師会と学校歯科・保健所歯科検診の間で、解釈の違いにより、是非が問われた問題があります。今回は、その事について触れておきましょう。

 

日本学校歯科医会は、平成14年から加盟団体に対して「平成15年度から、初期う蝕及び要観察歯(CO)検出の基準を変更する旨」の通知をしたところ、現場での歯科医師との間で、学校での歯・口腔の健康診断(以下、学校歯科健康診断)に「探針」を使用することについて認識の隔たりが生じ、当時は、両者の間で混乱が起きてしまいました。

 

その為、日本学校歯科医会では、円滑な学校歯科健康診断を実施するために、会員並びに学校保健関係者及び保護者に対し、「学校歯科健康診断時に探針を使用すること」についての解釈の指針を設けました。

 

1. 日本学校歯科医会では、初期う蝕及び要観察歯(CO)検出は、主に「視診」で行うように指導しています。しかしながら、どうしても、探針を使用する場合は、歯面及び虫歯の穴、或いは軟化した欠損部位に付着しているプラーク、食物残渣を取り除く時、裂溝のシーラントやレジン充填等の填塞物、充填物の確認する時は必要と考えます。

2. 探針は、補助的器具として使用し、探針の刃先は鋭利なものでなく、また探針は歯面に対して水平的に動かし(図1)、垂直的な圧力を加えて歯面を傷つけることがないように(図2)、細心の注意を払って学校歯科健康診断を行うよう記載されています。

 

3. 実は、現在に至るまで、理想的な初期う蝕及び要観察歯(CO)を見つけ出す事は、充分満足できる診断法は確立されていません。その為に探針の適切な使用をすれば、早期に発見できる確率が高まります。半面、検診を受ける児童生徒の大切な歯牙を破壊するリスクも僅かながら上昇してしまいます。

4. その後、色々な折衝案が盛り込まれ、上記の方法が、安全な健康診断法として、今日に至るまで定着しています。そして、検診事業にも、探針は残り、完全撤廃にはなっていません。

 

それでは、

 

以上の背景を受けて、今回の保健所の歯科健診には、探針は用意されていたでしょうか?

下図の写真をご覧ください、バットの左サイドに並べられている診査用具が、「探針」です。

 

申し訳程度に、ひっそりと用意されていました。ただ、人数分は無かったです。

そして、当日、私は探針を使ったでしょうか?

「はい、使いましたよ。」

 

40人拝見したお子様の中で、「エナメル質形成不全」を疑う方が一人だけいました。そのお子様は、エナメル質の厚みが薄く、生えている半分位の歯に象牙質が露出していました。その部分に虫歯が出来ているのかどうかは、

 

「目視しただけでは、判断が付きませんでした」

 

やむを得ず、探針の先端で、象牙質の表面性状を確認して、虫歯ではない事を確認しました。

検診事業も段々やりづらくなっています。