11月の連休に、カミさんと小旅行に出かけました。今回は、秋の紅葉見学も兼ねて、厚木の七沢温泉の「盛楽苑」にお邪魔しました。
お宿の近隣に、「ツリークロスアドベンチャー」と言うアクティビティ施設があり、還暦オヤジですが遊んできました。
当施設は、安全フックを装備したファーネスを装着し、木の上に設置した踊り場のある場所まではしごで上り、木から木へ、空中散歩をする施設です。全6コース存在しており、色々な駆数を凝らした綱渡りが用意され、高所ならではのハラハラ・ドキドキ体験が可能です。
普段、運動不足の身体には、結構堪える運動で、自分の体重が如何に重いか?重力に遡って上にあがる事が、こんなにしんどいのか?痛感しました。
さて、問題は次の日です。
当たり前のように「筋肉痛」になりました。
仕事に差し支えが出るといけないので、なるべく、早期に回復を図らなければいけません。そこは、東洋医学を専門にしているので、自分の身体を実験台にして、漢方を飲んで様子を見る事にしました。
●筋肉痛の漢方治療
まず、処方の目的は、
①鎮痛を目的とする処方
②血流を改善させる処方
③筋肉が抱える冷えを改善させる処方などの効能がある処方を考案します。
筋肉痛は、「血」の滞りや異常によって起きてきます。酷使された組織に流れる血流が、普段より少なくなった状態を、漢方では「血虚」と称します。
現代風に考えると、貧血傾向にも近い概念です。筋肉が血虚に傾くと、生命体にとっては死活問題なので、早期に鋭利な痛みとして情報発信してきます。
これに対し、激しいぶつかりで、筋肉が充血した状態を「お血」と考え、むしろ、痛みは鈍痛なります。
一般的に、血の異常を改善し、元気な血を生み出す処方は、「四物湯」(しもつとう)がファーストチョイスになります。一方、お血には、「桂枝茯苓丸」(けいしぶくりょうがん)がおススメです。
加えて、筋肉の損傷中でも、骨格筋と平滑筋によって、微妙に処方が変わってきます。
①骨格筋のダメージに有効な処方
疎経活血湯(そけいかっけつとう)
腰痛に由来する体幹部の痛みや手足の運動に関係する骨格筋の痛みに有効です。これは、実は前述した四物湯から派生した処方構成になっており、身体の中に溜まった水毒をデトックス生薬に加えて、血の異常を改善する生薬と鎮痛効果のある生薬が含まれます。非常にバランスの良い処方構成です。
八味地黄丸(はちみじおうがん)
ヒトの成長発育と骨の発達には、「腎」の働きが関係しています。加齢により人の働きが衰えると筋力低下を招き、腎虚による膝痛・腰痛が出てきます。本剤は、腰が重だるい、膝・腰の痛みや痺れに効果があります。特に、歩き出すとすぐ疲れて、歩行が止まったり、階段の上り下りが弱くなった時に良く効きます。
葛根湯(かっこんとう)
風邪薬のイメージが強いですが、本来は、風邪の引き始めの関節の節々がこわばった感じや、毛穴がゾワゾワした時などの、外寒表証の時に処方する薬で、風邪以外でも、肩コリや肩から項頸部にかけての疼痛にも奏功します。特に、咀嚼筋による顎関節症や僧帽筋の血流の循環を改善する事から、特に上半身の痛みを改善します。
②骨格筋、平滑筋の両方に有効な処方
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
骨格筋に対しては、ふくらはぎの腓腹筋の痙攣による「こむら返り」に良く効きます。加えて、骨格筋で構成された横隔膜の痙攣による「しゃっくり」にも奏功します。
平滑筋に対しては、特に腹痛に対して有効です。胃痙攣から来る胃痛、胆石症や尿管結石による疝痛発作にも効果的です。
今回の場合は、私は帰宅して、「疎経活血湯」を2包、服用して就寝しました。何となく、体温が上昇して毛穴が開いた事により、筋肉の血流が疎通し、疲れによる老廃物が、身体の外に排出され感じがしました。
翌日の仕事に殆ど支障が出ることなく、日常生活が送れるようになったので、運動後の筋肉痛にはお勧めです。