口臭治療を専門にして14年、4000人の方を拝見してきました。
その中で、もしかしたら、このHSPを抱えた方と、口臭で悩む患者さんには、一定の相関が有るのではないか?と言う思いに至り、色々調べてみました。
HSP(Highly Sensitive Person)とは、些細な他人の言動に敏感に反応したり、他人の感情に対して、必要以上に自分の気持ちが影響を受けてしまったり、あるいは、五感に関する感受性(周囲の音、光、臭い)が過敏になり、それが社会生活に支障が出てしまう位、気になってしまう方の総称です。
ただ、HSPは、病気ではありません。しかしながら、職場、学校、組織に所属する事が苦痛で悩みを抱えています。
HSPとは、一言で表現すると、「敏感すぎて傷つきやすい性格」と表現されます。
1990年代初頭、エレイン・アーロン(Elaine Aron)博士によって提唱された「人の気質」を表す名称です。アーロン博士の分析では、人口の約20%の人が、大なり小なりHSPの素養を抱えていると算出しています。さらに、アーロン博士は研究の幅を広げ、コバエ、鳥、魚、イヌ、ネコ、馬、霊長類などにもHSPを抱えている個体がいる事を突き止めました。この事から、生物が生き延びるために獲得した「繊細さ」が、より強調されて現れてきていると解釈しています。
本来は、生存本能そのものを意味しており、HSPは、種として「生き残るための戦略」の「なごり」であると考察しています。
ところが、現代社会において、HSPの気質を持つ人は、社会生活が上手く適合しにくい傾向に有り、ひどく気疲れしやすく、対人関係を含めて、生きづらいと感じている場合が多いです。
【HSPの特徴】
アーロン博士は、HSPには「DOES」(ダズ)と言う4つのタイプが存在すると定義しています。
1.考え方が複雑に物事を考え、熟考してから出ないと行動できないタイプ(Depth of processing)
□ ひとつを聞くと、十のことに想像を巡らし深く考えてしまう
□ ひとつの事を調べると深く探求してしまい、知識の豊富さで周囲を驚かせてしまう
□ 対人関係で、お世辞や馬鹿にした態度をすぐに見抜いてしまう
□ 何か物事を始めるにあたり、クヨクヨ考えてなかなか行動に移せない
□ 一時の快楽より、哲学的な生き方に興味があり、世間話や他人のゴシップネタが嫌い
2.外来刺激に敏感で疲れやすい(Overstimulation)
□ 混雑した人混み、街頭の大音量が嫌い
□ 友人との交流は楽しむが、帰宅すると、どっと疲れがでてしまう
□ 感受性が豊かで、映画・音楽・本・芸術作品に対して感動して泣いてしまう
□ 他人のチョットした言動に傷つき、いつまでも引きづってしまう
□ 生活の中の僅かな変化に、過剰なまでに驚いてしまう
3.人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい【Empathy and emotional responsiveness】
□ 人が怒られている所を見ると、自分のことのように共感してしまい、感傷的になったり、体調を崩したりしてしまう。
□ 感受性が豊かで、悲しい映画・書籍の主人公にに感情移入して号泣する。
□ 他人の僅かな仕草、視線、会話の音に敏感で、相手の考えを推察してしまう。
□ 言語化確立していない乳幼児、動物の気持ちを汲み取る事が出来る。
4.五感の感覚が鋭敏(Sensitivity to subtleties)
□ 冷蔵庫の駆動音、時計の機械音が、耳に残り気になる。
□ 太陽の強い日差し、夜の街のネオンサインなどの強い光が苦手。
□ 自分周囲のタバコの臭いや、体臭・口臭を感じると気分が悪くなる。
□ 偏食の傾向があり、カフェイン・香辛料・添加物に過敏に反応する。
□ 新品の下着に付いているタグの出っ張りや、トゲトゲ感を感じる衣服が嫌いで、過剰に気にする。
□ 感覚分析能力が高く、時として予知能力・第六感などの予測が当たる。
この他、
社会生活を営む上で、必ず、一人になる時間が必要。
子供時代に親・親戚・先生から「繊細な子」「人見知りが激しい」と評価された。なども、HSPの可能性が高いと考えられます。
しかしながら、アーロン博士は4つのうち1つでも当てはまらない人はHSPではない、と定義しています。例えば、4つのうち3つに当てはまっていたとしても、1つは当てはまらないと感じるなら、あなたは「HSP」ではなく、ただ単に「内向的な人」の可能性が高くなります。
口臭治療をしていると、問診の過程で、どんな時に自分のニオイが気になりますか?と、問い合わせると、HSPと似たような回答が寄せられる時があります。
「友達が、会話の中で顔をそむけた」
「接客中に、お客さんが、ハンカチで口を押さえた」
「電車の中で、離れたドアの人と、たまたま目が合った時に不快な表情をされた」
などなど、3番目の問診などは、殆ど口臭との因果関係は無さそうですが、本人は真剣に訴えてくるのです。
西洋医学では、明確な治療法の指針が確立されていませんが、東洋医学で見ると、HSPの主症状は、一部、「肝気うっ血体質」に近い部分があります。当院では、こうした口臭を抱える患者さんには、疎肝解鬱の効能のある漢方薬を処方すると、口臭のストレスが和らいでいく場合があります。この部分は、来年にかけての宿題にして行こうと思っています。