口腔内湿潤計:ムーカスを取り入れる

 

以前のブログで、漢方薬メーカーの「コタロー」とコラボして、今年の口臭学会で学会発表をして行く事はお伝えしてあります。

https://www.nakajomotoo.com/nichijo-20191031-1/

 

その際、オーラルフレイル(口内環境不自由感)と口臭の相関を検証したと言う事で検討を進めた結果、口腔内の乾燥状態を定量化する必要があると言う事で、商品名『ムーカス』(LIFE社製)を導入しました。

 

 試しに、私の潤い感を計測した所、測定値は「25.7」を示しました。測定値の判断は、

 

24.9以下:非常に乾燥

25.0~26.9:やや乾燥

27.0~28.9:標準値(境界値)

29.0~29.9:潤っている

30.0以上:非常に潤っている

 

と言う感じで評価されます。

私の場合は、やや乾燥と言う段階でした。

 

漢方薬の中には、唾液の量を促すものがあります。その中の一つが「甘露飲」なのです。

 

地黄(ジオウ)4g、甘草(カンゾウ)、石斛(セッコク)、麦門冬(バクモンドウ)、

茵蔯蒿(インチンコウ)、黄芩(オウゴン)、枳実(キジツ)、枇杷葉(ビワヨウ)、

天門冬(テンモンドウ):各2gと言う処方構成になっています。

 

潤い感を出しつつ、乾燥状態で発生する「空焚き状態」による熱も抑える生薬も加味されており、良く考えられた処方構成になっています。

 

まずは、自分の身体で実験をしようと思い、2週間、甘露飲を服用をしてみました。すると、口腔内の湿潤度が、27.3まで上昇してきたので、やはり、一定の効果は認められるようです。

 

所で、漢方薬の添付文書に記載されている副作用の所で、必ず出てくる、「偽アルデステロン症」と言うものがあります。今回は、この症状について考察してみましょう。

 

偽アルドステロン症は、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばり感、脱力感、筋肉痛が出てきて、徐々に強くなっていきます。

 

「アルドステロン」は、副腎から分泌されるホルモンの1つです。副腎は内分泌器官で、血圧・血糖・カリウム・塩分・水分などの体内バランス保つために、副腎皮質ホルモンと副腎髄質ホルモン分泌しています。

 

この二つは、ストレスホルモンともいわれています。過剰または不足しても、身体は異常をきたし高血圧症などの病気を招く事になります。

 

漢方薬の副作用に、なぜ、「偽」がつくのでしょうか?

 

副腎皮質ホルモンの1種である「アルドステロン」は、身体の中の塩分を増やし、逆にカリウムを排泄させて、血圧を上昇させる方向に傾きます。これが「アルドステロン症」です。特に高血圧の内、約10%は「アルドステロン症」が原因と言われています。

これに対し、アルドステロンの分泌が起きていないのに、アルドステロン症に似た症状が出る時があります。この状態が「偽アルドステロン症」に相当します。

 

「偽アルドステロン症」は、前述した症状が出てくるので要注意です。特に、こむら返りや筋肉痛が出るようになると、症状はより進行した状態なので、漢方服用の時は注意が必要です。

 

加えて、のどの乾き、食欲不振、頭痛、不整脈、息苦しさ、頻尿といった症状も随伴してきます。最終的には、四肢麻痺や意識混濁など危険な状態に至るので、少しでも違和感をおぼえたら、内分泌科などの受診が必要です。

 

なぜ、偽アルデステロン症が出るのでしょうか?

 

これは、「甘草」(かんぞう)の主成分である「グリチルリチン酸」が関係していると考えられています。ただ、甘草は多くの漢方薬に大なり小なり使われているので、それ程心配する必要はなく、その発症の確率は非常に少ないです。

 

作用機序は、グリチルリチン酸の過剰摂取によって、体内に塩分が過剰になり、反対にカリウムが出てしまう事で、「低カリウム血症」に傾きます。この事により、脱力感、倦怠感、筋力低下が出てしまうのです。

 

実は、その理由は解りませんが、男性よりも女性に多く発症します。その男女比は1:2の割合です。発症傾向は、50歳代以上の女性に多く認められます。

 

過剰に心配する必要はないのですが、少しでも症状が出た時は、当院に連絡をして下さいと、患者さんには伝えるようにしています。