SNSにおける誹謗中傷により、芸能人が自死をしてしまう社会現象が問題になっています。
その中で、「硫化水素」を用いた自殺法が報道されています。
硫化水素は、温泉街など自然界にも豊富に存在するばかりでなく、工場地帯の化学反応の副産物としても容易に発生しています。空気よりも重いので、くぼ地などに充満しやすく、年間、数件の割合で、硫化水ガス中毒により死亡事故も発生しています。
近年、家庭用のトイレ洗浄剤に、ある物を混ぜると、硫化水素が発生する事から、自殺の手段として用いられる事案が発生しています。それ以降、「まぜるな危険!」のラベル表記がされるようになりました。
硫化水素の、一般的な致死量は、350-400ppm位から、命の危険度が増してきます。
私は普段、口臭治療を専門にしています。14年間で4000人の方を診てきた中で、最も口臭が強い方の最大値は、3000ppbの方がいました。
測定の単位は、1000ppbが、1ppmに相当します。
3000ppb(3ppm)程度であれば、直接、命の危険が出たり、中毒症状を起こしたりする事はありません。
下図に示すように、0.0081ppmでヒト嗅覚で認知できるとありますから、0.0081ppmは、81ppbに相当します。
当院の口臭測定器における硫化水素の認知閾値は、「112ppb」である事から、下図のデータは、やや厳しめではありますが、「嗅覚に鋭敏な方」と言う但し書きがあるので、整合性は取れている訳です。
https://www.amita-oshiete.jp/qa/entry/014888.phpから引用
仮に3000ppbの患者さんは、3ppmである訳ですから、下図の表でいうと、中等度の臭気レベルと言う評価になります。そして、10ppmを超えると、目の粘膜に障害が出始めるので、決して安心できないレベルです。
我々は、こうした有害なガスが身体から発生していると言う事を、もっと念頭に入れておくべきだと考えています。
ココで重要なのは、
例え濃度が薄いとはいえ、人の命に係わるガス成分がお口の中で発生している事です。上図は、鼻や口から吸引し、肺に到達してから現れる症状の閾値です。もし、血清中に直接取り込まれた場合は、もっと低濃度で症状が出てくる事が考えられます。
仮に、歯周ポケットから、硫化水素のガスが体の中に入り込み、それが、何年にも渡って慢性的に曝露された場合、寿命の短縮との因果関係も、全くゼロではないでしょう。
口臭がお口の中から出始めている…と言うシグナルは、実は、身体からの危険信号だと思っておいて間違いないと思います。