コロナ肺炎の影響を受けて、世界中の人々が、大きなストレスを抱える事となってしまいました。
そして、有名な芸能人の方が、自殺を図ってしまうマスコミ報道が、頻繁に発生しています。
よく、自殺につながる「うつ状態」は、「心の風邪」と表現しますが、私が鍼灸の学校に通っていた時の教職員は、鍼灸領域から現場の最前線を知っていたものですから、自殺に関して、自説を述べました。私たち学生に向けて、こんな話を教示してくれました。
『うつ病は、「心の風邪」などと言う生易しいものではなく、「心の癌」と考えて下さい』
『全身に広がる癌と同じように、放っておくと、確実に死につながる「病」だと思っておいた方が良いです』
と、仰っていました。
『だから、もし、不幸にしてうつ病に由来する自殺が起きてしまった場合、残された家族は、自分を責める事になりますが、自殺をしてしまった方は、癌と同じように死につながる病によって倒れたんだ…と解釈すると、少しだけ心が休まります』
という内容で話を結びました。
なるほどと、納得をしました。
実は、口臭で悩む方の中には、「もう、自殺したい…」と、訴える方がいます。
私は、歯科医師なので、自分の専門分野である口臭を改善するために、漢方処方をします。その事によって体質改善が進行し、気持ちがほぐれる事で、「ずいぶん気が楽になった」と、評価す患者さんもおります。
今回、全人的医療の観点から、自殺と東洋医学について考察を加えておきましょう。
コロナ肺炎により世界的な蔓延により、私たちの社会生活は一変してしまいました。
「将来が不安だ」「対人との交流が疎遠になった」「上司の仕事のプレッシャーが厳しくなった」など、今まで以上に多くのストレスを抱えるようになりました。
すると、脳内では、以下のような反応を示し始めます。
まず、ストレス情報は、脳の領域の中で「大脳皮質」で信号を受け止めます。大脳皮質は「理性の脳」と言われ、ジックリと考える事が得意です。
特に、私達の社会生活の中で、思考や理性を伴った行動を得意としています。
そして、隣接している部位に「大脳辺縁系」と言う領域があります。ここは、大脳皮質で受け止めた情報を統合管理する所です。特に正しい・間違っているという評価ではなくて、「心地良いか」「不快か」で、状況判断を下してしまいます。これは、ヒトが本来持っている「本能」や「感情」と照らし合わせて、好きか・嫌いかの評価を下す仕組みになっています。
ココで重要な点は、直感的に判断できる脳の情報処理は、ストレスを感じる事はありません。
例えば、
青信号を視覚で見れば「進め」
踏切で警笛の音を聞けば「止まれ」
この評価には、主観が入り込む余地はなく、直感的に判断できます。ストレスを感じる暇もなく、適切な判断がなされてしまいます。
ところが、
満員電車で、ギュウギュウ詰めの状態だと、とても不快を感じてしまいます。
そして、この時に、自分では自覚症状はないですが、脳の中の情報処理でもギュウギュウ詰めの状態に陥っている事が重要です。この時に、正しい・間違っているという判断ではなく、心地よいか、不快か?を判断する、大脳辺縁系が活発に働きだします。
「大脳辺縁系」も、ストレス感情により、窮屈感を感じているのです。
そして、日々の暮らしの中で、多忙、人付き合い、家族関係、借金などでストレスを抱えすぎると、徐々で大脳皮質で情報処理する能力が、パンクする事になってしまいます。
すると、大脳辺縁系は、些細な情報でも全て「不快」と感じるようになり、最終的に、間脳を通じて自律神経を過緊張の状態に傾き、心身に影響が現れ、体温調節、発汗、心拍数などの身体のバランスを制御する働きが損なわれ、ヒトの健康状態を平衡に保つ恒常性が機能しなくなります。
これに対し、大脳皮質の処理能力に余裕がある方は、大脳辺縁系に情報を送ることが少なくなり、ストレス信号をキャッチしても、大脳辺縁系が興奮する事が少なくなり、ストレスは軽いものとして処理されます。
最終的に、大脳辺縁系は「不快なのも」と感じる事は少なくなり、「それ程不快なものではない」と受け止めていきます。最終的に、自律神経に悪影響を及ぼすことは少なくなり、うつ傾向から脱する事が出来るようになります。
つまり、満員電車でギュウギュウ詰めの状態で「不快だ!」と感じたら
周りの状況の観察して、何か「面白い情報」を探してみる事が重要です。
例えば、
「あの人、大きなあくびをして、間抜けな顔だなぁ」
「あの子、私の好みのタイプだなぁ。でも少し化粧が濃いぞ!」
「あの電光掲示板の広告、新しいものに刷新されたんだ…」などなどです。
少しでも、脳の中が心地よいと感じる「興味のわく事」「面白い事」を探してみるのです。
そして、できれば、自宅に帰ったら、その面白い話を家族や友人に話して、情報の共有をしてみると、愛想笑いではなくて、腹の底から1回、笑う事が出来れば、脳内ストレスはリセットされるのです。
それでは、東洋医学(特に日本漢方)でも自殺予防ができる養生法はないのでしょうか?
まず、東洋医学における健康の考え方は、「陰」「陽」のバランスが良く、調和がとれている状態を良しと考えます。逆に、どちらかに大きく傾いている体質の方は、体に変調をきたしやすいのです。
●陽性体質の方は、高速道路をかっ飛ばしている状態なので、突然、事故でプツッと、突然死をする事はありますが、事故る直前までは、イケイケ状態で飛ばしているので、自死する事はありません。
見た目も、ずんぐり、むっくりで、アンコ腹、赤ら顔で高血圧の脂ぎったイメージです。性格も陽気で、楽天的で活動的なタイプです。陽性体質の方は積極的で快活ですから、営業職、社長、コンサルタントなどの職業が向いています。
これに対し、
●陰性体質の方は、高速道路で法定速度を保って走行できない人です。ノロノロ運転を繰り返し、運転操作も心もとなく、とっさの対応も遅れがちです。今にも止まってしまいそうです。
緊張の糸が切れた時に、自死をしてしまう恐れがあるのです。
見た目は、色白で長身であることが多く、毛髪の量も多い傾向で、筋肉量は少なく、冷え性で神経質、生真面目タイプです。陰性タイプの方は、内にこもってジックリタイプですから、コツコツと辛抱強く、堅実に仕事をこなしていきます。研究者、作家、銀行員、税理士などに職業が向いています。
そういえば、最近、不幸にも自殺をしてしまった芸能人の方を拝見すると、男女とも、皆さん細身で長身、髪の毛が長髪、生真面目タイプの傾向が伺えます。
この事から、陰性タイプの方が、より陰性に傾くことをしてしまうと、自死に向かっていく事が考えられます。特に、身体を冷やしてしまうと、前述したエンジンの働きも冷えてしまうので、突然、エンストをしてしまいがちです。特に、季節の変わり目で、寒暖の差が激しい時、急に冷え込んできたときは要注意です。
日ごろから、お風呂の半身浴、厚着、腹巻、靴下を2枚履くなどの対策で、身体を温める事が重要です。
食養生では、身体を温める、「紫蘇葉」や「生姜」を好んで食べると良いでしょう。
一方、身体の外からできる養生法は、ツボ刺激です。一押しは、内関と言うツボです。
手首のシワを目標に、指三本分の間隔をあけた、手首の腱と腱の間に存在しています。少し指でグイっと押して、イタ気持ち良い位の力加減で押し込んで、1~2分ホールドをすると良いです。
内関のツボは、心臓の働きを鼓舞するので、疲れている時に、全身の血流を疎通して、車のエンジンを再起動してくれる働きがあります。
かくいう私も、コロナの影響で、業績が落ちてしまい、「もう、仕事辞めたいな」と思う時もあります。そんな落ち込んでいる時は、上記の養生法をする事で、何とか復活していこうと考えています。