新型コロナ感染症が世界に蔓延して、2021年初頭で1年が経ちました。
口臭専門クリニックの中城歯科医院では、コロナ禍においても治療のために、患者さんの呼気を、ヒト嗅覚で嗅ぎ分ける「官能検査」を実施しています。
患者さんの中には、
「患者さんの口臭を嗅いだことで、先生は、コロナに感染しないのですか?」
と言う問い合わせを頂きます。
今回は、口臭治療を行う事による、コロナウィルスの感染リスクについて考察を加えてみましょう。
まず、近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)環境医学・行動科学教室准教授、東 賢一の研究チームの研究成果から引用させていただきます。
https://newscast.jp/news/5032698
コロナ感染の経路ですが、一般的には、下図に示すような部分から、医療従事者へウィルスが侵入してきます。
【研究の目的】
新型コロナウイルス感染症では、ヒト~ヒト間の二次感染のリスクは、主に、
「飛沫感染」
「接触感染」
「空気感染」に分けられます。
この経路別に感染リスクを解明する事が、医療現場での、より効果的な感染予防策につながっていくので、それぞれのリスクを、正しく把握できれば、どの感染経路の時に、どの様な注意をしなければならないかが分かり、「正しく恐れる」事が可能になってきます。
研究チームは、医療従事者が新型コロナウイルス感染症の患者と接触した「時間」・「回数」の違いにより、どの位、感染リスクが上昇するのか?シミュレーションして計算しました。
加えて、サージカルマスクやフェイスシールドを着用した場合の感染リスクについても計算を行いました。特に、上図の作業中に、どの位のウィルス量が関係しているのか?を検証した結果が、下図です。
研究では、患者の唾液中に含まれるウィルス濃度が、どの位になった時に、どの医療動作の時に感染リスクが高まるか?棒グラフで表されています。(図の横軸が、ウィルスの数です)
その結果、ウィルス量が、少ない時(10の4乗個)は、飛沫感染による感染のリスクが圧倒的に多い事が分かります。空気感染に相当する「緑」の棒グラフは、唾液中のウィルス量が、10の8乗の濃さになって、はじめて感染するリスクとして出てきます。
感染リスクは、殆どの場合、「飛沫感染」と「接触感染」の可能性が高い事が分かります。
以上の事から、例えば、臭いを封じ込める専用の臭気袋(サンプリングバッグ)に呼気を封じ込め、その袋から、間接的に臭いを嗅いでみる行為は、空気感染になるので、感染するリスクは、ものすごく少ない事が示唆されます。
ただ、患者さんの顔の前に、鼻先をもってきて、直接臭いを嗅ぐ行為は、ギリギリ・アウトのような感じもします。その為に、当院では、口臭治療を行う場合は、個室に限定し、私自身がいったん個室から席を離れ、嗅覚をリセットしてから、もう一度、部屋に入り直した時のニオイを嗅ぎ分けるようにしています。こうすれば、ソーシャルディスタンスは保たれ、ニオイを嗅ぐ事も出来ます。
その他の院内の感染予防対策は、「手洗い」と「サージカルマスク」を併用し、補助的に「フェイスシールド」を用いれば、充分であることが伺えます。加えて、その都度、殺菌・消毒を励行し、機器類は、オートクレーブによる滅菌処理で十分な訳です。
実際、2020年は、延べ1000回以上、患者さんの口臭を嗅いできましたが、私自身は感染する事はありませんでした。