蜂蜜と東洋医学

 

1月某日、感染対策を十分した上で、一般社団法人トウヨウミツバチ協会 高安和夫様ご夫婦と、ビジネスミーティングをしました。

 

去年から始めた、甲府でのアグリヒーリング(農業体験による癒し)で、ストレスチェックのテストをした事をキッカケに、ご縁がつながりました。

 

高安氏の活動は、以下の通りです。

障がい者を持つ方と養蜂体験の研究事業が、2016年に予備研究が始まり、2017~2021年と、

JRA(日本中央競馬会)の畜産振興事業の助成を受けて進めています。

沖縄県から北海道まで、全国11箇所の障がい者就労支援事業所で、約30名の知的障がい・精神障がいを持つ皆さんと、ミツバチ試験飼育を実施しています。

 

この研究事業において、養蜂体験によって、障がい者の方のストレスの緩和、癒し効果のエビデンスをデータ化したい…と言う要望のもと、私の方で、何かのお手伝いが出来るのではないか?特に、唾液アミラーゼテストの測定値により、養蜂体験の前後で、緊張度の緩和が、どの位得られているのか?に関して検証実験を考えている訳です。

 

その様な経緯を経て、「ハチミツ」の持つ、東洋医学的な食養生に関して、もう一度、考察しておきたいと思います。

 

その前に、「蜂蜜の甘さは、虫歯にならないの?」と言う疑問ですが、これに関しては、おおむね大丈夫という所です。

 

・虫歯を作るミュータンス菌は「砂糖」から「不溶性グルカン」という、水に溶けない粘着性のベタベタ物質を産生し、歯の表面に非常にしつこく付着するプラーク形成します。

糖類の中で、不溶性グルカンを作るのは「砂糖」だけです。

・虫歯菌が糖類を取り込んで酸を産生し、歯を溶かして脱灰を起こすことです。この場合、砂糖以外の糖からも酸は酸性されます。

 

さらに、

・糖質の種類でみると、蜂蜜は「ぶどう糖」と「果糖」が主成分で「砂糖」の割合は、ごく少量です。ぶどう糖と果糖からは、虫歯菌による不溶性グルカンの産生されないため、はちみつを食べても歯の表面に付着するプラークが形成されにくいのです。

・ただ、虫歯菌は、ぶどう糖と果糖からも酸を作る為、蜂蜜の過剰摂取は、やはり、虫歯を誘発する可能性があります。

・ただし、ここで発生した「酸」は、唾液の中和機能である「緩衝能」で酸性度を減弱するので、虫歯リスクは回避できると考えます。

・そして、蜂蜜は、殺菌作用・抗菌作用・消炎作用があり、ミュータンス菌の活動を抑えるため、虫歯の予防につながります。

・加えて、過酸化水素(オキシドール)という物質が含まれています。これは、口内細菌を不活化するので、歯周病の予防になります。

 

ハチミツの東洋医学的な特性を考える前に、そもそも「食」には、どの様な特性があるのかを知らなければなりません。

 

【食材の性質…5性について】

食材には、熱・温・平・涼・寒の5つの性質があります。これは、何となくイメージしやすくて、激辛料理を食べれば、身体は厚くなりますし、よく冷えたトロピカルフルーツを食べれば、身体がクールダウンする事を実感できます。

1.熱・温

読んで字のごとく、身体を温める性質です。

「温」は、ゆっくりと穏やかに身体をジワッと温めるのに対し、「熱」は、さらに短時間で強くドカッと温める性質があります。どちらも、身体が冷えてしまう体質や寒い季節に適しています。逆に体に熱がこもりやすい体質の場合は控えた方が無難です。

 

2.平

読んで字のごとく、平均的な性質です。

「平」は、どちらともいえない中間的な性質なので、特に強く体を温めたり冷やしたりしないので、長期に食べても問題ありません。比較的腹持ちも軽いので、乳幼児などに与えても、大きな問題が起きにくい食性です。

 

3.涼・寒

読んで字のごとく、身体を冷やす性質です。

「涼」は身体の抱えている熱をゆっくり穏やかに冷ます性質で、「寒」は涼よりも強く作用して、切れ味良く身体を冷やしてしまいます。身体の中のどこかの臓腑に熱を抱えている時や、炎症反応がある時、または、猛暑で夏バテを感じたり、熱中症になったりした時に適した食材です。「温熱」と同様に、平素から身体が冷え切っている体質の方は、より冷ます方向に傾いてしまうので、出来るだけ控えていきます。

 

 

【食材の性質…五臓・五味・五色について】

東洋医学(中医学)では、陰陽五行説にのっとり、自然界の営みや、私たちの身体の仕組みを、5つの分類に分けて解釈しています。その中で、

1.五味

これは、食物の味の分類を、その働きに別に分けて、5種類の味に分類をしています。それは、「酸」・「苦」・「甘」・「辛」・「鹹」があります。最後の「鹹」は、塩味の事を指します。

そして、陰陽五行の色体表に照らし合わせて、五味には、それぞれに対応する、相性の良い五臓が割り振られています。味と臓器の働きの相関を、良きにつけ悪しきにつけ、関連付けている訳です。この関係性を理解しながら、味を整えて食生活をしていけば、臓腑の機能を高めたり、逆に、悪化させたりする事になります。

(注:本来は五味には、もう一つ、「淡」と言う味が存在し、六味を形成しているのですが、消化活動を司る「脾」との関係性が高く、「甘」にも重なってくるので、便宜的に省いた形で論じてみます)

 

五味
五臓
五色
作用 症状を引き締める・とどめる・固める・体液を生み出す 清熱する・便秘を改善する・解毒・免疫力を上げる・湿を追い出す 疲労回復・虚弱体質を鼓舞・消化を助ける・鎮痛作用 身体を温陽する・気血の疎通を良くする・邪気を発散 しこりや堅い物を和らげる・塊を除去・便を柔らかくする

 

【食材の性質…扶正去邪】

東洋医学(中医学)では、身体の構成要素を、「気」・「血」・「水」と考えています。いずれも、私たちの身体の営みを健常に保つためには必須なものと考えています。

そして、この構成要素に過不足が生じた時に身体に色々な変化が出て着ると考えています。

足りない時を…「虚」と解釈し、それぞれ、気虚・血虚・陰虚ととらえ、元のバランスに戻すために、補うための「補」を施します。この方向性を、「扶正」と表現します。

一方、気・血・水の流れが滞ったり、余分な病理産物が蓄積したりした時を…「実」と解釈し、舌に引き下げる「瀉」(しゃ)を施します。気の滞りは「気滞」、血のうっ滞は「瘀血」(おけつ)余剰な水の抱えは「痰湿」と解釈します。これらは身体に害をなす物として「邪」と解釈し、身体からデトックスして取り去ったり、邪を寄せ付けない体質にしたりすることを「去邪」と表現します。

 

以上の内容を受けて、蜂蜜の食性を考察すると、

・五味・五色 : 甘味、平性・黄色

・帰経 : 脾に作用し、肺を潤し、大腸の機能を整える

・効能1 :消化活動を補い、胃痛を緩和する。

・効能2:肺を潤し、咳を止める。喘息、空咳

・効能3:腸を潤し、便通を改善する。

・効能4:ピロリ菌、口臭発生菌の殺菌作用

 

ただ、蜂蜜は、高カロリーなので、身体によいと解っていても、過剰摂取は禁物です。