月食と東洋医学

 

5月は、天体ショーとして、スーパームーンの月食が観察されました。

 

 

西洋では、狼男伝説にも引用されているように、昔から、満月による月の影響が、ヒトの心身に影響を与え、ヒトを凶暴にさせてしまう…と、信じられていました。

 

東洋医学でも、月の満ち欠けは、身体に影響がある…と言う解釈が見て取れます。

東洋医学は、「暦」「方位」「天体の運行」などが一体となって、人の健康を左右していると考え、そこから派生して、「易」や「占い」が発展していきました。

 

●月の引力の影響

東洋医学では自然と人の生命活動は、相関関係があるものとして受け止めています。特に、2000年以上前に記述された、中国最古の医学書『黄帝内経』(こうていだいけい)には、月の運行が、人体の生命活動にも影響を与えていると、記述されています。

 

一例を上げると、天体の運行と患者の状態は、影響し合っているので、その治療方針も、巡り方の法則を考えて、天体の運行(太陽・月・星)のタイミングに合わせるべきである。と解説しています。

 

特に、太陽に関しては、1年を二十四節気に分けて、季節とその移り変わりに合った治療方針、鍼の刺し方が存在しています。

 

同様に、月に関しても法則があります。特に、人体の70%が水分で構成されている人体は、月の満ち・欠けによる「潮汐力」の影響を強く受けます。

例えば、女性の生理周期や、海に自生するサンゴの産卵、火山活動や地震の発生も、潮汐力が、何らかの形で影響を与えていると考えられています。

 

それでは、どの様な事に気を付けて、月の運行を、私たちの健康に役立てて行けば良いのでしょうか?

 

●新月から満月になるまで:生活習慣を見直すチャンス

新月から満月に至る臭気は、上り坂のイメージです、身体にとっては、徐々に気が充実して行く時期なので、満月を乗り越えて、変化が起きる前の「準備段階」と考えて行きます。

 

日々、刻々と、月は丸く満ちていきます。これに呼応して、ゆっくり体の中の気のエネルギーも加算されていきます。やがて、その気は、全身をくまなく巡りはじめます。身体にストレスや暴飲暴食によって、必要以上に負荷をかける事に注意して、月が満ちていくペースに合わせて、体調もゆっくり昇り調子に持って行くのが、賢い養生法です。

 

この時期は、体調と精神を整え、ピークに至るまで、徐々にリラックスさせて行くのです

 

上り坂は、きついですが、頂上に行くまでの位置エネルギーを溜め込む作業は、実は、身体にとって心地よい時でもあります。

 

●満月の時:全てが活発に満たされるタイミングですが、無駄使いの空回りに注意

満月のころは、頂上に上り詰め、広く全体を見渡せる時期です。上り坂の時溜め込んだ、気のエネルギーを「収穫する」絶好のタイミングです。

気血の流れもスムーズになり、栄養や酸素などが、身体の中にくまなく行き渡り、生命活動も活発化します。仕事や趣味などにも良い影響を与える時期です。

 

ただ、エネルギーが満ちているので、それを、一気に吐き出す事は禁物です。気も高ぶっているので、注意が散漫になると、空回りをしてしまいます。その反動で、気分が滅入ったり、落ち込んだりしてしまう事もあります。

 

エネルギーの出入りが多いので、無意識に、甘い味、脂っこい食材、アルコール類で補給しようとしてしまいます。一気に発散してしまうと、思わぬ誤解も招きがちになるので、対人関係にも注意が必要です

 

気の高まりを、平静に保つためには、精神の安定が第一です。軽い運動、有酸素運動、映画鑑賞、美術館巡りなど、心と肉体のバランスを保つことが、賢い養生法になります。

 

●満月から新月にもどるまで:身体に溜まった老廃物を追い出す時期

満月の時に、気のエネルギーが満ち溢れ、活発に消費した後は「回復基調」が必要になってきます。

 

気のエネルギーは、幾つものサブタンクに収納されて増加するので、一気に使う事が出来ません。その一つ一つの使ってしまった分を、回復させる必要が出てきます。この事から、新月に至るまでの時期は、ゆっくり休息して、次の溜め込む時期までの準備期間として、色々な計画を、ジックリ考える時期として適しています。

 

特に、栄養補給と睡眠が必要な時期です。出来れば、自分にとって熟睡考えられる睡眠時間を確保したい時期です。暴飲暴食は避けて、1日3食を心がけ、生薬の山薬である山芋、生薬の大棗であるプルーンなどを好んで食べると、気が満たされていきます。

 

そして、溜め込んだものを徐々に排除する時期なので、ぬるめの湯加減で入浴し、シッカリ汗を出す事が肝要です。

 

月食の理屈が分かっていなかった古代の人達は、畏敬の念をもって、このイベントを目撃していたはずです。その神秘性は、現代になっても、全く色あせる事はありません。