『ケンシロウによろしく』を読んでみて思う事

 

ジャスミン・ギュさん原作の『ケンシロウによろしく』と言う劇画を読んでみました。

いつか、こういうテーマを題材にした物語が出てくるかな?と、思っていましたが、ようやく、東洋医学とかツボを扱う劇画に巡り合う事が出来ました。

あまり書くとネタバレになってしまいますので、詳しくは書きませんが、主人公の沼倉は、幼少期にある事情で、母親に捨てられ、その復讐のためにツボを学びます。

 

ナント、その師匠が、北斗の拳のケンシロウなのです。

 

北斗の拳は、世紀末の救世主で、暴力が横行する荒廃した人類のために、北斗神拳と言う暗殺拳を用いて、必殺の秘孔を突いて、悪党どもを退治するストーリーです。

 

その決めゼリフは、「お前は…もう死んでいる」が有名です。

 

主人公の沼倉も、北斗の拳に使われているツボを学び、復讐の相手に対して、「ア・タタタタッ」と、打撃を加えますが、漫画のようには上手く行きません。ものの見事に、返り討ちに合います。

その後、主人公は、もう一度全身のツボを学び直すために、真剣に勉強をし直し、とうとう、国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」の資格を取得してしまいます。

実は、私も、人体にツボと言うものが存在し、それが、本当に人の健康に役立っているのであれば、ケンシロウのように学んでみたい…と言う衝動に駆られて、鍼灸師の夜間専門学校に、3年通ったので、主人公の沼倉の心境は、凄く理解できます。

 

そして、治療院を開設して、来るべき復習の機会を伺いながら、ストーリーは進んでいきます。

主人公は、メキメキ臨床家としての腕を磨き、以下のように、日常の施術中に…、

「お前はもう…」

 

 

「笑っている」

と言う所まで、治療家としての腕を上げました。

 

その中で、1点気になっているのが、劇中の描かれている「肩井」(けんせい)のツボです。このツボは、第7頸椎棘突起と肩峰を結ぶ線の中点に位置するのですが、バンザイをした姿勢では、そのツボを探る事は出来ません。可能であれば椅子に座り、ダランと肩を下げた状態の方が押しやすいのです。

 

 

本編の作画を見ると、ツボの位置が「微妙にズレている」ようにも見えます。 

 

 

その後、治療院を経営しながらも、本来の目的である、復讐を諦めた訳ではありません。色々な巡り合わせで、復讐の相手が、自分の治療院に通う事になったのですが、いきなり死に至る秘孔を突くと、訴訟になってしまうので、沼倉は作戦を練ります。それは、ジワジワ・ゆっくり体調を崩し、血栓ができやすいツボを選んで、徐々に、死に追いやる計画を立てます。

 

ところが!と、劇中で話は進んで行くのですが…、

 

所で、暗殺拳の北斗神拳ですが、経絡秘孔を突く事による外的ダメージと言うよりは、身体の中から、骨・筋肉・臓器を破壊する殺法です。

 

それでは、本当に、命に係わる…ツボは、存在しているのでしょうか?

実は、ツボの中にも、「急所」と言われる所があります。今回は、禁断のツボについてご紹介してみましょう。

 

●檀中(だんちゅう)

北斗の拳の話の中にも、「心壇中」のツボとして登場します。男女とも、両乳首を結んだ中点、身体の正中にある胸骨上に存在します。武道の空手の正拳突きなどで打撃されると、心臓振盪を受けて、心臓の拍動がおかしくなり、場合によっては、意識を失う事になります。特に、骨が柔らかい、成人前の男性が、「失神ゲーム」など遊び半分で、ここにパンチを出し合うと、大変な事故になるケースもあるので注意が必要です。

 

 

●鳩尾(きゅうび)

檀からさかに身体の正中を辿って、へそに向かうと、骨に当たる部分が途切れる所があります。そこは、左右の肋骨の分岐が始まる部分でもあります。この少しくぼんだ部分が、鳩尾です。この部分に強い外的刺激が入ると、呼吸できなくなり、横隔膜の動きがしばらく止まってしまいます。ひどい時は、咳が止まらなくなってしまう、危険なツボです。

 

●人中(じんちゅう)

正中線上で、鼻の付け根、上唇の上に、誰でも縦に溝が走っています。これ全体を人中と言いますが、急所で考えると、正中部になります。ここは、私が鍼灸の夜間専門学校に通学していた時、授業で同級生から鍼を打たれました。

 

 

鍼の手技の中で、「雀琢」(じゃくたく)と物があります。ちょうど、スズメが地面に落ちている米粒を、くちばしでツンツンつついているイメージです。

 

私が学生時代、この人中のツボに、鍼で雀琢刺激を受けた時は、衝撃的でした。身体中に電気が走った位、ビビビッっとシビレが走ったのです。しかも、目はパッチリ空いて、意識が覚醒し、その日は、自宅に入っても、夜明けまで就寝できませんでした。

 

芸能人の皆さんも、覚せい剤などの禁止薬物の力を借りなくても、この人中のツボ刺激を与えれば、意識は聡明になり、寝ないでも良くなるので、身体に副作用を及ぼす事もなく、思う存分、創作活動が出来るのではないか?と思うくらい、凄い体験でした。

 

●完骨(かんこつ)

こちらは、耳たぶの後ろを指で触ると、乳房のような骨の高まりが蝕知されます。これが、「乳様突起」です。完骨のツボは、その直下に位置しています。左右一対あります。程よい刺激では、安眠のツボになり、私も子育ての時に、夜泣きする我が子に、優しくこのツボを揉み解した所、スヤスヤ眠ってくれたので、ここのツボの効果は、お墨付きです。

 

 

ボクシング漫画の「はじめの一歩」の劇中、日本チャンピオンの伊達英二が、主人公で挑戦者の幕の内一歩選手と対戦した時に、挨拶代わりの一撃として、このツボ周辺にパンチを浴びせました。一歩選手は、三半規管を揺らされ、激しいめまいを感じ、平衡感覚を焼失しました。しばらくの間、フラフラになりながら戦いました。

 

こうしたツボに安易に刺激を与えてしまうと、大変なことになりかねないので、専門家の意見を仰いで、慎重に扱いたいものです。