電気自動車乗りとしては、エンジンの振動や音が出ない事は非常に有り難いのですが、あまりにも無音で走るので、商店街の細い道を走行する時に、自分の前に、歩行者がいる時などは、全く自車の存在に気付いてくれなくて、ゆっくり歩行者の後を、トロトロと追従して、気付いてくれるまで、ひたすら待つことになります。
以前、軽く短い感じで、「プッ」とクラクションを鳴らしたのですが、
思った以上に歩行者をビックリさせてしまい、足腰が不自由な方であれば、その場で、転んでしまうくらいのリアクションを与えてしまったので、それ以降は、「注意をしなければ」と、考えるようになりました。
その位、電気自動車は、忍者のように音もなく、歩行者に忍び寄るのです。
その為に、電気自動車によっては、低速走行時だけエンジン音を模した「ブーン」と言う電子音を出す仕組みをわざわざ設けて、自車の存在を認識してもらう工夫をしている車もある位です。
また、国によっては、キチンと法整備をして、疑似音を出す事を義務化する動きも、ちらほら出てきています
何とか、歩行者に不快な思いを与えずに、気持ちよく気付いてもらうために、今回は、歩行者保護の観点から、こんなものを購入してみました。
「ワイヤレス・ドアチャイム」です。
この2つの装置を、
●音を命令する送信部を「車内に」(右図)
●音を出す受信部を「トランクに」(左図)
設置して、必要な時だけ、車内のボタンを押して、車から「ピンポン」などの音を出して、歩行者に気づいてもらうのです。
この効果は絶大で、殆どの歩行者は、快く気付いてどいてくれます。
私は、仕事柄、足元スイッチ(フットスイッチ)を多用する事が多いので、音を出すリモコンボタンは、邪魔にならない、足元に置いています。鳴らした時に、歩行者の動向を視認したいので、ボタンを押した時の視界も保っておきたいのです。
ところがです。
この、一見、便利で有用な対策にも、厳密に考えると、「法律の壁」が存在します。
もしかすると、「警音器使用制限違反」と言う道路交通法違反に該当してしまうかもしれないのです。
警音器とは警笛の事で「クラクション」のことです。
実は、クラクションは、いつ・どこでも鳴らしていい訳ではなく、使える場所が限定されています。詳細は、道交法54条で決められています。
① 右の見通しのきかない交差点
②見通しのきかない道路の曲がり角、又は見通しのきかない上り坂の頂上で、道路標識等により指定された場所
② 山地部の道路でカーブが多い道路で、道路標識等で指定された区間の①と②に該当する場合
③ 危険を防止する為に、やむを得ない場合が挙げられます。
ただ、危険防止の観点から、大型トラックなどは、左折する時に、クラクションとは別に、補器類から「左に曲がります」、後退する時に「バックします」などの音声を出して、歩行者に危険を知らせます。これは、法律的にOKのようですね。
特に、上記④の「危険を防止するためにやむを得ないとき」に関しては、意見の分かれる所です。過去の判例は
「車両の接近に気がつかずにその前方を横断しようという歩行者を認めた場合」としています。
しかしながら、大前提として、道交法54条2項を見る限り、原則としてクラクションは鳴らしてはならないと、明確に定義されています。
この事は、実際の運転の際に、
●前方を走る車が、ノロノロ運転の場合、注意を促す目的でクラクションを鳴らしたり、
●前車が、信号の青に変わった事に気づかずに、催促する意味で鳴らしたり、
●暴走族が、市街地で意味もなく、クラクションを鳴らす迷惑行為をしたりする事は、
全て認められない行為になります。
前述した、ワイヤレスチャイムが、道交法に接触するかは微妙です。
現在の道路交通法は、電気自動車が存在していない時代に作られました。
実際に、交通安全課に問い合わせた所、以下の回答が寄せられました。
道路運送車両の保安基準 第43条の第4項
●自動車(緊急自動車を除く)には、車外に音を発する装置であって警音器と紛らわしいものを備えてはならない。
●ただし、歩行者の通行その他の交通の危険を防止するため自動車が右左折、進路の変更若しくは後退するときにその旨を歩行者等に警報するブザーその他の装置又は盗難、車内における事故その他の緊急事態が発生した旨を通報するブザーその他の装置については、この限りでない。
電話に出た担当者によると、この項目に当てはまると考えてよいのではないか?との回答を得ましたが、あくまでも、自己責任で使用する必要があります。
何か大きな事故があってからでは手遅れなので、あくまでも、緊急時に、どうしても、と言う時だけ活用しようと思っています。