コロナワクチンの微熱対策、漢方処方による解熱

 

コロナワクチンの接種率が、人口の6割を超えてきて、副反応の影響も、徐々に解ってきました。

 

その中で、2回目の接種で、38.5度以上の発熱を抱え、日常生活に支障が出るくらい、苦しんでいる方が、一定数でています。

 

 

一時は、アセトアミノフェン(カロナール錠)などの解熱剤が、陳列棚から消え失せる事態も出ていました。また、インフルエンザが流行している時に、非ステロイド性消炎鎮痛剤(ロキソニン錠)の服用により、重大な副反応を疑う事象が起きた影響で、熱性疾患には、安易に解熱剤を用いない方が良いのではないか?と言う風評が流れました。そんな背景を受けて、ロキソニンよりは、カロナールが重用されるようになってしまいました。

 

でもチョット待ってください。

実は、漢方薬の中にも、発熱を引き下げるお勧めの方剤があります。今回は、微熱が出ている時に、症状を和らげる、漢方処方について触れてみましょう。

 

【麻黄等と葛根湯】

今月のブログで、太陽の運行と病態の変化を論じてみましたが、発熱が旺盛な時期は、陽証の時期です。漢方薬では、まず初めに、麻黄湯をファーストチョイスとして考えます。

 

麻黄湯は、うなじのあたりが、ゾクゾクして寒気がして発熱感があり、身体の節々が痛むなどの、かぜのひきはじめの様な症状によく効きます。麻黄湯は、寒さによって体表(毛穴)が閉じ、体内のエネルギー産生や、栄養状態が悪くなったため、なかなか発汗がスムーズに働かず、悪寒を感じている時に、身体を温めて、毛穴を開いて発汗を促すことで、「解表」をさせて、熱を発散させる効果があります。

 

暑い季節に、かき氷を食べるのではなく、激辛料理を食べて、サッと汗をかいて、その後涼む…そんなイメージです。

 

実は、良く知られた「葛根湯」(かっこんとう)よりも、身体の表面を温める作用は、麻黄湯の方が強目です。この事から、葛根湯よりも、やや症状が進行している時に重用する傾向にあります。熱が出ているのに、身体は寒気を感じて、顎がガタガタ震えて、咳き込んで、関節の節々が、こわばって痛みを伴う症状を目安に用います。

 

漢方では、寒気を感じているのは、

「カラダが温めたいと欲求を出しているサイン」と解釈しています。

 

ワクチンを打った時の副反応で、少し寒気を感じる時は、例え熱があったとしても、身体の表面を温めた方が、早く熱っぽい感じが出ていきます。この発汗を促す事で、熱をさばく…と言う考え方は、漢方薬特有の養生法だと思います。

かえって、この方が、自分自身の自然治癒力を鼓舞して、身体の中に侵入した「邪」(ウィルスや病原性細菌)の増殖を抑える働きがあるので、熱も早く引いていくのです。

 

【麻黄湯と葛根湯の違い】

それでは、麻黄湯と葛根湯は、どのように使い分けたらよいのでしょう?

その目安は、「温める力の強さ」です。

 

葛根湯には、麻黄湯と同じ生薬が配合されています。それは、桂皮、麻黄、甘草、生姜、葛根、芍薬、大棗の生薬が加わり、計7つの生薬が配合されている漢方薬です。

 

カラダをより強く温める生薬が配合されている麻黄湯と違い、実は、葛根湯には身体をクールダウンする生薬も加味されており、この部分が決定的に異なる部分になります。その為に、葛根湯は、麻黄湯に比べて、身体を温める効力が、若干弱めになっています。

その他に、体力のある子供には、麻黄湯が適しており、少し体力が衰えている高齢者には、桂枝湯などを選択するのも、賢い処方になります。

 

【身体が冷えているか?簡単なチェック法】

葛根湯や麻黄湯を使い分ける時に、どのくらい体が冷えているか?の、チェック項目があると、飲み分けの目安になります。

①首の後ろ、うなじのあたりを冷やしてみる

首の後ろには、「完骨」「風池」「翳風」などの重要なツボが散在しています。

実は、熱のコモリは、こうしたツボ周囲にサインとして出てきます。少し冷やしたタオルで、首の後ろを冷やしてみましょう。もし、冷感を強く感じ、嫌な感じがすれば、身体が冷えている兆候です。逆に、心地よい感じがして、冷やす事が、気持ちよく感じるのであれば、身体に熱がこもり始めている証拠です。

②鼻水

実は、カラダが冷えている時は、鼻水にも性状の変化が出てきます。冷えを抱えている時は、鼻水も透明で水っぽく、粘り気が無いサラサラした感じです。一方、熱を抱えると、黄色くキョキョロした粘り気のある鼻水に変化して、時として、臭いも伴うようになります。

③ 飲み物の好み

ファミリーレストランのドリンクバーで、無意識に、温かい飲み物を選んでしまう時は、冷えを抱えていて、冷たいドリンクを選ぶときは、身体に熱を抱えている状態にあります。

 

こうした「冷え」と「熱」を目安に、葛根湯と麻黄湯を飲み分けると良いでしょう。

 

【麻黄湯と飲むタイミング】

① 汗をかいていないことが条件

どのタイミングで服用するか?の指標は、「汗をかいていない」点が目安となります。

麻黄湯は身体を温陽し、発汗を促す漢方薬です。もし、麻黄湯を飲んで、毛穴が開き、ジワッと汗をかいたら、良く効いている証拠です。そこから先は、自然治癒力に任せて、服用を中断します。

 

これに対し、今現在、汗をかいて熱が出ている場合は、麻黄湯は不向きです。益々発刊してしまい、体力を損耗し疲弊してしまいます。時として、症状を悪化させる事にもつながるので、注意が必要です。

 

② ピンポイントで!長期間服用しない事

風邪の引き初めは、表証の時期です。この病邪は、やがて身体の中に侵入し、裏証に入り、症状を悪化させます。熱性疾患は、表証から裏証に入るまで、1~2日かかります。本剤は、この「表証」の時期に服用する事が非常に重要です。

 

「あれっ、風邪ひいたかな?」と思った、その時に服用しないと手遅れになる点が重要です。

 

もし、症状が裏証に入ってしまったら、竹茹温胆湯、五虎湯など、身体を芯から冷やす漢方薬に変更していきます。

 

③ 最後の一押し、厚着と温性食品がサポート

繰り返しになりますが、熱の出はじめには、身体を温めて発汗させることが目標になります。

その為に、日頃から少し厚着をする、温性食品を心がけることが重要です。

一晩、汗をジックリかくと、本当に翌朝、熱がさばけて、起きた瞬間から、スッキリした感じなるので不思議です。

加えて、首の後ろにある「風」の名のある、「風池」「風門」「翳風」のあたりが、スースーする感じで露出していると、逆効果なので、とっくりセーターや、マフラーなどを巻いて、冷やさないことが賢い養生法です。

 

風邪でも、インフルでも、コロナでも、ワクチンの副反応でも、熱っぽいな…と感じたら、こうした養生法を併用すると、つらい時期が短くなり、気持ちよく生活が出来るようになります。