これからのビジネスに、もしかしたらジビエ料理が、非常に重要になると考え、事前の予習として、埼玉県川越市に店を構える、「Chiyo」さんに出向いて、鹿・鴨料理を堪能してきました。美味しかった味を忘れないうちに、備忘録をまとめておきます。
今さらながらですが、ジビエ料理とは、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を指します。
日本では、イノシシ・鹿・熊・鴨肉などが一般的です。もともとは、フランスの貴族から始まった食文化で、
上流階級の人しか、口にする事が出来ない程、貴重な食材でした。
狩猟によって得た食材ですから、例えば、競走馬などの馬肉は、ジビエ料理とは呼びません。
私達の食習慣は、生き物の死によって成り立っています。
ラーメンの上に乗っている、チャーシュー1枚にも、尊い命の犠牲によって成り立っています。
この事が、あまりにも当たり前になってしまい、スナック菓子を気軽に食べるような感覚で、生き物を食べてしまっているのが、
我が国の食習慣です。そして、その「命の肉」を美味しく食べるために、咀嚼機能があります。
歯が悪ければ、どんな料理もいただけません。
そこを再現するために、歯科医師としての私の仕事が存在しています。
「いただきます」「ごちそうさまでした」
を、提供できるのは、我々歯科医師しかいないのです。
その事をもう一度再確認するために、生き物が、家庭の食卓に乗るまでの工程が、どのようなものなのか?
身体に優しい食とは何なのか?について、2022年は掘り下げます。
その第一弾が、今回の、ジビエレストラン探訪になります。
ジビエ肉は、自然界に自生する動植物を栄養源として育った動物ですから、人工飼料を与えられ、食用肉として育てられた、
豚や牛よりも、栄養価が優れ、脂肪分が少なく、高たんぱく・低カロリー食材です。
日本では、11月15日~2月15日までが、狩猟時期として認められています。
さて、「Chiyo」さんのマスターは、異色の経歴の持ち主です。
ジビエ料理のお店を開業して、9年目になりますが、前職は、ナント「自衛官」だったそうです。競技の銃を扱うスペシャリストでした。
アジア大会の金メダルを取るほどの腕前ですが、オリンピック参加の予選会では、最後の最後まで、高得点を得ていましたが、
銃のジャミング(動作不良)によって、惜しくも参加できなかったという事です。
現役引退後も、指導者として、後進の指導に当たりました。
素敵なお話の中でも、特に興味を引いたのが、競技者の身体・精神状態が、どのようなものなのか?を検証するために、
各種のセンサーを身体に付けて、射撃をしたところ、ナント引き金を引く際に、心臓の拍動が、瞬間、停止している事がある…と言う事でした。
本来、自律神経に支配される心臓の拍動は、ヒトの意思でコントロールできません。
もし、心臓の拍動による、手先のブレが、照準を合わせるのに、妨げになっているとしたら、「競技者の意思」で…
「心臓よ止まれ」と、意図的にコントロールできるようになっているのだとしたら、「達人の領域」です。
もはや、仙人・悟りを開いた高僧の域に達しているのだ…と思いました。
料理は、どれも素晴らしく、マスターの「うんちく」をお伺いしながらの食事は、より一層美味しく感じられるひと時でした。
頂いた料理は、「鹿のタタキサラダ仕立て」「鹿肉のステーキ」「鴨のロースト」などです。ナイショのサービスで、
特性ピザや、自家製スモークチーズ・鹿肉の燻製なども頂きました。
本当にChiyoマスター、ごちそうさまでした。改めて再訪して取材したいと思います。
所で、ジビエ肉の漢方的、薬膳効果はどのようなものでしょうか?少し考察しておきましょう。
●鹿肉:「甘味」「温性」
・五臓を補い、気力を生み出して、高める効果
・気血を生み出し、筋骨を滋養する
・母乳の出も良くするなどの効能が見込めます。
また、その皮は、煮詰めて煎じると、女性の不正出血や帯下(おりもの)予防にも効果があります。
●イノシシ:「甘鹹味」「平性」
・補気健脾(消化を助けエネルギーを産生する)
・鮮血便予防や痔核の止血
・風邪を取り去り、解毒・鎮静する
生食は避けて、火を充分に入れて食すことが必要。
●鴨:「甘味」「涼性」
・消化不良を主治し、虚弱の補い気を増す
・停滞した水毒を巡らせ、湿熱をクールダウンさせる。
・眼精疲労をスッキリさせる
・筋骨を強める
・梅核気(喉のつかえ感)、ゲップ・しゃっくりを止める
畑を荒らす害獣として駆除される、鹿、イノシシのうち、食用に活用されるのは、10~20%程だそうです。
その他は、その場で埋葬などの処分をされてしまいます。
食品衛生法で、肉の一次処理をするために、狩猟後の時間指定も厳密に規定されている現状、なかなか難しいかもしれませんが、
大切な命です。何とか、ヒトの口に入るような仕組みが構築できれば良いな…と思っています。