過日、WEB情報サイトの「oceans」と言うメディアから、取材を受けて、WEB上で記事が公開されました。
「舌が渇く」「表面が赤紫」は脳卒中や心臓病のサインかも。舌が発するSOSの見分け方
https://oceans.tokyo.jp/article/detail/39092
舌診に取り組んで30年、10万人以上の方の舌を拝見してきました。
そんな中、youtubeを何の気なしに見ていたら、恐らく「舌つながり」でAIが判断し、
「あなた、この舌動画も見たいでしょ」と言う感じで、おススメに出てきたのが、下記の動画です。
焼肉屋さんの店主が、牛タンのさばき方をする解説動画です。
「ほうほう、めったに牛タンのブロック肉を見る機会がないので、少し見てみるか」と言う事で、動画を視聴してみました。
当然、牛さんの舌診をしてみた訳です。
すると、人間と同じように、舌の表面にイボイボした「舌乳頭」が見て取れます。
草食動物で、葉っぱをすり潰したり、反芻したりする必要があるので、舌の表面が、ザラザラした感じなのでしょう。
そして、舌の色を見た時に、特に、舌先端が、紫色を呈しています。
もしこれが人間だったら、一大事です。完璧にドロドロ血の「お血」体質を疑います。
良くよく調べてみると、ミオグロビンが関係していることが分かりました。今回は、食用肉について考察してみます。
【食用肉の成分】
食用の畜肉は、主に骨格筋の部分を食用にします。
実は、肉の中には水分が多く含まれ、70%を占めており、残りの30%前後が、筋肉タンパク質から構成されています。
さらに、筋肉タンパク質はさらに細かく分類され、筋原線維タンパク質、筋漿タンパク質、肉基質タンパク質に分けられます。
筋漿タンパク質は、筋原線維の間に存在する汁液部分に溶けた状態で存在します。主に、水溶性の球状タンパク質です。働きとしては、酸素運搬に関わる「ミオグロビン」や、エネルギーに関与し、生命活動に必要な酵素を含む「ミオゲン」のタンパク質で構成されます。
【ミオグロビンとは】
ミオグロビンは、ヘム鉄とグロビンからなる「色素タンパク質」で、肉の色が、赤々としているのは、このタンパク質の色に由来しています。
間違いやすい所としては、血管内の血液中に血色素は、「ヘモグロビン」です。
食用肉を煮込んだ時に出てくる、ふわふわとした「アク」は、この水溶性の筋漿タンパク質が流出して、分離・凝固したものです。
【肉の色について】
食用肉の赤色は、ミオグロビンに由来し、ミオグロビンの量が多い程、赤味も強くなります。
一例としては、鳥のささ身はミオグロビン含量の少ないので、白っぽく、多い牛肉は赤い色が強いのです。
ここで重要なのは、肉の部位によって、ミオグロビンの含有量は異なってきます。仔牛よりも成牛の方が多く、特に、筋肉が細かく色々な動きをする部位で、酸素を多く消費する所は、ミオグロビンも多く含まれます。
牛タンは、関節の構造を持たない、筋肉の塊です。
牛は、年中、舌をモグモグ動かしています。ミオグロビンが多いことが予想される部位です。
ここで重要な点は、肉の色調は、このミオグロビンに含まれる鉄分の酸化状態によって決まります。
新鮮な生肉は、筋肉中に残存する酸素を消費して、既に無酸素状態ですので、2価の鉄を含む還元型ミオグロビンで、紫赤色を呈しています。
これが、空気と触れると、鉄分は酸素分子が結合し、酸化型ミオグロビンとなり鮮赤色を呈します。
この鮮やかに変色する変化を「ブルーミング」と呼びます。
さらに酸化が進み、2価のヘム鉄が3価になると、肉の色は、褐色を呈します。
動画の舌の表面が、紫赤色を呈しているのは、漢方における「お血」体質ではなくて、新鮮なお肉の証明による舌の色だったのです。少し納得できました。
所で、動画中でも述べていましたが、牛タンの価格が、年々高騰しているそうです。主な原因は、製造コストの増加と、普段、あまり食べる習慣のなかった国々の方が、食べるようになり、需要が増えていることに起因すると解説していました。
現在の社会情勢では、そのお国の方の方が、日本より裕福であり、買い占めている事を拝聴すると、「日本も、もっと頑張れ!」と、言いたくなりますよね。
それにしても、店主の方の包丁さばきは、さすがプロですね。
サクサク、肉を下ろしていきます。もしかしたら、外科手術も立派にこなせるかもしれません。動画をよく見ると、グローブも、2重に重ねる「ダブルグローブ」でさばいています。
プロ意識の高い方なんだな…とお見受けしました。
他の動画では、牛タンは先端よりも、付け根の方が美味しい事がわかり、その見分け方も学びました。今度、焼肉屋さんで出された牛タンの断面を見て、どの辺の部位を出されたのか?細かく見てみるようにしてみたいと思います。