近年、芸能界の薬物汚染は深刻で、つい先日も、アイドルの方が、覚せい剤で逮捕されてしまいました。
実は、生薬の中にも、幻覚作用のあるものが少しだけあります。興奮作用があったり、多幸感を感じたり、気分がスッキリしたり、うつ症状を改善したりする作用があります。
●ヒキガエルの分泌液である『蟾酥』(センソ)
簡単に言えば、昔、縁日の出店の口上で見た、「ガマの油」の事です。
特に、メキシコ北部やアメリカ南西部に生息する、コロラドリバーヒキガエル(Incilius alvarius)の分泌液に含まれる「5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)」が、幻覚剤として重用されます。
このヒキガエルのガマの油を乾燥させて、粉末状にしたものを吸引します。
その他にも、麦角菌由来のLSD、ペヨーテ由来のメスカリン、キノコ由来のシロシビン、つる植物由来のアヤワスカなどからも幻覚剤を抽出する事が出来ますが、ガマの油の蟾酥(センソ)に勝るものはありません。
この薬物乱用でトリップするのは、人間だけではありません。例えば、馬は幻覚作用のある薬草を食べるし、象は完熟して発酵した果実を食べて、酔っ払いになります。ビッグホーンは、酩酊感を得られる地衣類を好みますし、類人猿は、アルコール成分を含む果実を好んで食べます。
●春の七草には入れてもらえない、『走野老』(ハシリドコロ)
早春の芽吹き時、真っ先に生えてくる植物である。別名:キチガイソウとも言われています。(現在では差別用語)繁殖力旺盛で、みるみる葉を付け、紫色の花を結びます。葉っぱの出で立ちが、美味しそうな感じなので、山菜感覚で摘み取って、食べてしまうと、大変なことになるので注意が必要です。
走野老には、幻覚作用があり、気が触れたかのように、走り回って苦しみだします。薬草の名前通りの挙動を示すことになります。
自然界の動物も、この植物はヤバいことが分かっているので、鹿などの草食動物も、走野老は食べません。その為に、野山に豊富に見つける事が出来てしまうのです。
この走野老は、生薬になると「ロート根」の原料にもなります。効能は、胃痛の痙攣を収めます。本生薬にはアトロピン、スコポラミンなどのアルカロイド類が豊富含まれています。
いずれも、副交感神経遮断作用を持ちます。この事から、消化液分泌抑制により、胃酸過多抑制、胃痛緩和、胃十二指腸潰瘍改善に効果が見込めます。一般的に、ナス科の植物には毒性の強いアルカロイドを含む種が多いのが特徴です。