まずはこの動画を見てみよう
これは、2004年から始まる、電気自動車大手、テスラ・モーターズと、その他の自動車メーカー上位の企業との時価総額の推移を年度別に棒グラフに表わしたものです。
この棒グラフの伸びは、文字通り企業の強さと企業価値を表しています。
テスラの時価総額は、6160億ドル(約64兆1000億円)を超えており、なんと、世界の自動車メーカー全体を合わせた時価総額の3分の1を占めています。
そしてこの額は…自動車メーカー上位16社を合わせた時価総額と同額なのです。この事は、テスラ1社で、その他の名だたる自動車メーカーと同じ価値があると言う事です。
そしてこの中には、天下の「トヨタ」も含まれています。
この結果は、電気自動車が、物凄くいい車で、イケてるからでしょうか?確かに、電気自動車は、持続可能なエネルギー社会を構築して行く上で、今後が期待されている産業です。
実は、テスラは電気自動車が良く売れたから、時価総額を伸びた訳ではありません。
実際の販売台数を見てみると、
実際にテスラが販売した台数は、上手の円グラフの一番に上に示す、小さな青い領域(BMWとワーゲンの間)しか売れていません。
【なぜ時価総額が高騰した?】
なぜ、時価総額が上昇したのか3つも仮説が成り立ちます。
①ここがスゴイ…宣伝費
自動車の広告といえば、
・無人の町中を、軽快な音楽と共に、駆け抜ける車のテレビコマーシャル
・上質な紙で作った、分厚いパンフレット
・道路を走っていると、突然そそり立つ、会社のロゴ入り立て看板
自動車の宣伝と言えば、こんな感じが定番でした。
何とか自車のイメージ脳裏に焼き付けて、ディーラーまで足を運んでもらう為に、お土産に、テッシュやトートバッグを渡して、
購買意欲をくすぐる…などの苦心が目立ちます。
実際に、国内宣伝費だけで比較すると、
●トヨタ自動車:4000億円以上
●日産自動車:3000億円もコストをかけています。
これに対し、テスラ社の看板広告、テレビCM、ダイレクトメールを目にしたことがあるだろうか?インターネット広告さえ、
同社は出していません。
つまり、1円たりとも広告費を出していないのです。
なぜ、広告を出さないか?と言えば、
●CEOである、起業家のイーロンマスクが、常にSNSで話題を振りまくからです。
●本当に良い商品であれば、ユーザーが、動画・ブログ・口コミで、おススメしてくれるからです。
イーロンマスクは、スペースX社も経営しており、友人火星飛行を目標にしています。先日も、宇宙ステーションに人を届けるために打ち上げたロケットの動画で、宇宙飛行士を、ロケットまで運んだ車が、「モデルX」と言う、大き目のSUVでした。
鳥の羽が羽ばたくように跳ね上がる後部座席ドアは、宇宙飛行士ヘルメットと干渉しないので、何ともカッコいい演出です。
いっぺんで、「あの車なぁに?」
と、ネットで検索するでしょう。認知度、バク上げです。当然、広告費がいらない分だけ、自動車の販売価格は安く出来ます。
②ここがスゴイ…自社製造
今までの内燃機関の自動車は、大小の部品を全て合わせると、1台の自動車を作るのに、3~5万個を必要としました。
当然、自社だけでは用意することが出来ないので、下請け・孫請けなど、多くの会社が協賛して、部品を調達します。
分業体制が必須の、大事業だったわけです。
所が、テスラは、殆ど1社で賄っているのです。小さな部品に至るまで、下請けではなく、自社の直営工場から調達して組み立てます。
ここでもまた、販売価格を引き下げる事が可能になります。
例えば、自動車には、下請けから納品された部品のそれぞれに、別のコンピューターが組み込まれています。
これを、テスラは、1か所で集中して管理する、システム・メインコンピューターに統合しました。
下請けから納品される基盤、それぞれにコンピューターが搭載されていると、何かの不具合が生じた時でも、対応が後手に回ります。
例えば、自動運転を管理する際に使う、カメラやセンサーから入ってくる膨大な情報を分析するコンピューターは、当初は「NVIDIA」と言う会社の物を使っていましたが、それさえも見切りをつけて、自社開発に移行してしまった経緯があります。
しかもしかもです。ネット回線による診断で、どこに不具合があるか?データを分析して、わざわざディーラーまで足を運ばなくても、通信で修理が可能になってしまいます。
これに加えて、ネット回線を通じたバージョンアップで、より良い物にアップデートするサービス付きです。まるで、走るスマホのようです。これにより、買った時よりも、さらに高性能…と言う付加価値を手に入れてしまったのです。
従来の工業製品は、買ったものに対して、直ぐにマイナーチェンジを繰り返し「意図的陳腐化」を図る事で、買い替え需要を掘り起こしてきました。
テスラは、購入後も、常に最新の状態で使用することが出来るので、所有満足度が高いのです。こんな事は、既存の自動車メーカーでは、絶対にできない芸当です。
③ここがスゴイ…政府から潤沢な資金援助を受けている
実は、テスラ社は、脱炭素社会の為に、2010年の時点で、米国エネルギー省から約465億円もの融資を、超低金利で得ています。
加えて、投資家からの資金調達により、ナスダックへ上場も果たしました。
株価も、当初の5倍以上で推移しています。
政府からの手厚い融資によって、現在のテスラは存在しています。
世界中で、政府からの補助金によって、電気自動車への移行を促しています。
グーグル・アマゾン・フェイスブックグループは、ネット上のフィールドを提供しているだけなので、製造業ではありません。企業としては、自社のシステム全般を管理しておけば良いので、非常にリスクは少ないです。
テスラの登場が、「ゲームチェンジャー」になるのか?その先の技術確認によって、別の企業が、さらなる市場を作るのか?出来るだけ長生きして、自動車業界の行く末を見届けたいですね。
そう言えば「全個体電池」、いつ商品化されるのでしょう?トヨタさん、モリゾーさん、本当に頑張って下さいよ。