東洋医学に取り組んで、30年以上が経過しました。39歳の時に、夜間専門学校に通って、国家資格として、「鍼灸師」の資格を取得し、漢方薬処方と併用して、口臭治療に従事しています。
今まで、体質に関して、掘り下げた事が無く、東洋医学の根幹をなす「体質」に関して、今一度、論じておきたいと考えます。
体質と言う言葉は、普段の生活でも、何気なく使われています。
「子供の時らか、もともと冷え性体質で…」
「お酒が飲めない体質みたい。」
「父親の体質を受け継いじゃって」
などです。
東洋医学における体質は、先天的・後天的にも、まずは、以下に上げる3つの要素の盛衰を見定める事から始まります。
【虚・実】
「虚実」(きょじつ)」を見定めるには、2つの概念があります。
●まず、患者さんの基礎的な体力の強弱です。
基礎体力の満ち満ちて充実している人は「実証」
基礎体力が弱弱しく枯渇している人が「虚証」と判断します。
●もう一つは、身体が持つ免疫力・抵抗力の多い・少ないも関係してきます。
こうした抗病反応が強ければ「実証」、
抗病反応が弱ければ「虚証」と判断します。
この基礎体力と抗病反応の強弱は、密接に関係していて、本来であれば2要素×2要素で、4パターンの可能性を考える必要があるのですが、実際の臨床では、基礎体力が満ちていれば、坑病反応も強くなり、基礎体力が少なければ、坑病反応も弱くなるので、実質、ワンセットで考える事が多い傾向にあります。
ただ、身体の体力と抵抗力の反応には、「時間差」生じる事も多く、逆パターンとして出てくる場合もあり、「虚実夾雑」と解釈するので、体力を先に補うのか、抵抗力をつけた方が良いか?については、深く患者さんの状態を見ないと、察しが付かない時もあるので、複雑です。
●虚実の鑑別所見
虚証:顔色が悪い、痩せ、胃腸虚弱、易疲労、健忘冷え性
実証:血気盛ん、筋肉質、食欲旺盛、楽観的、活動的、多汗
【寒・熱】
「寒熱」(かんねつ)は、患者さんが感じる主観的な熱感です。
例えば、住環境によって、他の人が心地よく感じる室温でも、暑く感じたり、寒く感じたりする事でも判別できます。または、ファミレスのドリンクバーで、無意識に氷入り飲料を選ぶか?温かいお茶系を好むか?によっても判定できます。
その他、肉眼所見で、顔が赤ら顔で、脂性の皮膚で発汗傾向であれば「熱」、顔面蒼白で、声に力が無く、弱弱しい感じがすれば「寒」と判断します。
ここで重要な点は、体温計で平熱を示している時でも、患者さんが「熱い」と訴えている時は、熱証と判断していきます。逆の寒の場合も同様です。主観的な要素が高い一面があります。
●寒熱の鑑別所見
熱証:赤ら顔、目が血走っている、暑がり、夏負けしやすい、冷気を好む
寒証:顔色が青白い、性格が大人しい、寒がり、冬に体調を崩す、夏でも足が冷える
【表・裏】
表裏を判断する事は容易です。例えば、風邪の引き初めに、身体がゾクゾクして、毛穴がゾワゾワ、微熱っぽくて、「アレ?風邪ひいたかな?」と言う時が、表証です。この状態が継続し、病邪が身体の中に侵入し、喉が痛くなったり、下痢をしたり、高熱が出たりする時は、裏証と判断します。
その病気が、どこで起こっているか?場所を示す指標になります。
●表裏の鑑別所見
表証:風邪の引き初めの諸症状、体表面、皮膚症状
裏証:風邪が悪化した時の諸症状、臓腑に症状が出た時
上記の虚実、寒熱、表裏に加えて、後天的に以下に上げる3要素が複雑に関係してきます。
【後天的の3要素】
・遺伝(両親や家系から、代々受け継いだ要素)
・気質(個人の性格、感情の起伏)
・環境(社会、生活、居住空間、食習慣、地域差、気候変動など)
東洋医学では、生まれつき授かった「先天の精」と、生まれた後に備わる、「後天の精」を加味しながら、成長・発育・老化の段階で、徐々に形成される心理・生理機能など考慮していきます。
【気血水】
最終的に、元気の「気」、オレの血が赤く燃えるぜの「血」、体液の「水」が関わり、これらの過不足で体質が決まっていきます。
【代表的な体質分類】
・気虚(生命エネルギーが枯渇している)
・陽虚(気虚を続けると、身体を温める事が出来なくなる)
・血虚(胃腸が失調すると、血を生み出せなくなり、栄養を運ぶ(血)が不足している)
・陰虚(体内の水分が枯渇している)
・気滞(気の流れが停滞している)
・血瘀(血の流れが停滞している)
・痰飲(水分代謝が低下している)
・湿熱(ネバネバした痰飲が、身体に取り付き熱がこもっている)
こうした体質により、それぞれ別個の口臭が出てきます。体質別の漢方処方が求められてきます。