骨粗鬆症と漢方処方

 

11月某日、わが家に思わぬアクシデントが起きました。

私と同じ還暦おばさんであるカミさんは、昔から身体を動かすのが好きで、スポーツクラブで汗を流します。

 

そんなある日、消え入るようなか細い声で、私の携帯に電話がかかってきました。

「ウェートを持ち上げている時に、具合が悪くなった。迎えに来て」と言うメッセージでした。

 

仕方なく、自家用車で向かうと、痛々しそうにしているカミさんが、ヨロヨロと出てきました。

「なんか、胸にボールが当たったみたいに、バンという衝撃と音を感じた」と言う物でした。

 

2、3日たっても、痛みが引きません。呼吸をしても、就寝中に寝返りを打っても、痛みが走ります。

 

以前、腰を悪くした時に受診した整形外科に行って診察をしてもらったら、捻挫だろう…という事で、コルセットを処方されました。

それでも良くならないので、セカンドオピニオンとして、母親が受診している整形外科に行って検査をしたところ、

「肋骨ではなく、胸骨にヒビが入っている」

「胸骨の場合、コルセットは不要で、自然治癒するまで4~8週間の安静が必要」という診断が下りました。

 

受診する先生によって、診断も変わってきます。

その後、骨粗しょう症の検査もしたのですが、その重症度は、今まで診査をしてきた中で、トップクラスに悪化したものでした。担当医曰く

「私が見てきた患者さんの中で、レコード(記録)になっちゃったかもなぁ」と言う物でした。

 

それからのカミさんは、ずっとため息の連続です。若いつもりでいたカミさんも、年相応だった訳です。

 

【骨粗しょう症と漢方処方】

 

人体の骨は、竹のようになったパイプ状の硬い皮質骨を、ヘチマの様なスポンジ状の海綿骨によって構成されています。骨粗鬆症は、皮質骨の中の海綿骨が少なくなり、隙間が増えてスカスカになってしまう症状です。骨自体の大きさは変わりませんが、海綿骨の割合が少なくなるので、少しの応力で、骨折しやすくなります。

骨粗鬆症は高齢者に多く、特に閉経後の女性に多い傾向にあります。

 

骨は常に、造骨と破骨を繰り返して、恒常性を保っています。そこに、カルシウムの不足や骨の新陳代謝のバランスが悪くなると、破骨による骨の破壊が進行し、新生する造骨が追い付かなくなると、徐々に、骨がもろくなっていきます。

 

東洋医学では、骨の健常な発育は、「腎」が主ると定義しています。この事から、骨粗鬆症は「補腎」の効能を持つ生薬を中心に処方を考える事になります。

ここで重要な点は、単にカルシウムをたくさん摂取しても、化骨の方にその栄養は回ってきません。腎虚体質になると、骨に吸着しないので、骨密度を上げるためには、石灰化の能力を高める必要があります。

 

そこで、腎の働きを補い、骨を健常にする漢方薬として、

八味地黄丸、牛車補腎丸、海馬補腎丸、独歩丸などが推奨されます。

加えて、関節を形成する骨を動かすためには、筋肉の滋養も重要です。筋肉は、「血」が満たされないと、モリモリ増えてこないので、特に更年期以降の女性の場合は、ホルモンの分泌を鼓舞する漢方薬を合方するとなお効果的です。

具体的には、婦宝当帰膠や女神散などが効果的です。

 

早く治って欲しいと願っています。