量子コンピューターと高校生

 

先月に引き続き、量子コンピューターの未来について、

https://globe.asahi.com/article/14437647?fbclid=IwAR2Niv0-GLa_FLMGYRYIzuQ242yMEhZHFdJx1VTHUCrVwT8fqmRBAETDfYA

 

量子コンピューターの可能性を広げるために、株式会社フィックスターズ主催により、その応用法を提案するコンテストが催され、「Fixstars Amplifyハッカソン」において、応募71作品の中で、木更津工業高等専門学校)情報工学科に今春入学した越智優真さん最優秀賞に輝いた。

 

 

並みいる、東大、東工大、早稲田大、慶応大、東北大などの大学生や大学院生を押しのけての受賞です。お姿を拝見すると、将棋の藤井聡太さんにも似た風貌で、ふんわりとした、柔らか頭に見える見た目です。

 

しかも、受賞したロジックは、既に、中学3年生の時に構想を練っていたというから恐れ入ります。

 

受賞したタイトルは「浅(くて広い)層学習 少データでお手軽機械学習」です。

 

従来の人工知能(AI)は、膨大な量を学習させ、「深層学習(ディープラーニング)」させる事によって、最適解を導く思考回路でした。

 

従来のコンピューターは、ある一つの回答を出すために、常に、AとBの分岐点を設け、ドンドン枝分かれしていく選択肢の中から、最も適合するものを導き出すのです。

その母集合が、10だろうが、1000だろうが、1億だろうが、やっている事に大きな違いはありません。多ければ多い程、回答の精度が上がる仕組みでした。

 

例えば、コンピューターの目の前に、お寿司の画像見せた時に、それが、お寿司であると認識するためには、ラーメン・とんかつ・カレーライスなど、多くの情報と照らし合わせて、どうやら、お寿司で間違いないだろう…と回答を出す仕組みです。

 

より高性能なコンピューターで、より早い演算処理を計算できるマシンになれば、一発回答が出来ます。越智さんは、この思考過程の中で「組合せ最適化問題」に着目し、より速く回答を導き出すためのプログラムを開発しました。

 

より少ない情報量で、AIにも高い学習精度を持たせたのです。

 

例えば、玄関から出て、目的地に着くまで、ナビゲーションでは数多くの分岐点が存在します。最初の一歩目から、二股に分かれた選択肢を選んで歩みださなければ、最短で現地に着く事は出来ません。

 

 

この行為は、1画面上の平面でなされていきます。

今までは、一平面上で、多くの分枝した道筋を覚え込ませ、最適な道順を導き出しました。

でも、この思考過程が、同時進行で、何面もあったらどうでしょう?飛躍的に回答が早くなるはずです。

 

これが思考の「階層性」です。

量子コンピューターのAIにおいては、超高速で計算できる「量子アニーリング」という概念が適応されます。従来のコンピューターは、「0」と「1」の二者選択でした。これが、量子コンピューターになると、0と1を同時進行で考えることが出来るのです。

量子力学は、階層性を持って重ね合わせの原理が活用できるので、「並列処理」によって、劇的に計算速度が速いのです。

この事により、少ない情報量でも、効率的に学習可能になる訳です。

 

量子コンピューターは、まだまだ分からないことだらけです。既存概念に縛られた勉強をし過ぎた博士たちは、既にオールドタイプです。若い感性を持つ新人類の台頭を願っています。

もしかしたら、思考の飛躍・自我の形成・嫉妬や妬みなどを持つAIが、本当に出てくるかもしれません。

 

ところで、私は、患者さんの体質合った漢方薬を、30年かけて学んできました。でも、その最適処方を、量子コンピューターが、あっという間に導き出してくれたら、物凄く有り難い反面、商売あがったりです。そうなった時、私は何に向き合えばよいのでしょうか?

 

量子コンピューターとの付き合いにも、機嫌を取ったり、休暇を与えたり、気を使うようになったら、面倒くさいことがまた一つ増えてしまいそうですね。