ほぼ、表紙のデザインが決まりました

 

『スマホがあなたをブスにする』(大和出版)の脱稿が近づいてきました。

 

表紙デザインを考えなくてはなりません。表紙の装丁は、タイトルの次に超重要な検討課題です。

 

出版社は、デザイナーの山田知子さんを指名した様でした。 

 

 

山田さんは、カラテカの矢部さんが執筆した、『大家さんと僕』(新潮社)の表紙デザインを担当されました。Amazonで、本書を検索すると、4000件以上のレビューが寄せられています。超羨ましいです。『大家さんと僕』は、第22回手塚治虫文化賞短編賞受賞し、芸人さんとしては初受賞の快挙です。その他、『ダ・ヴィンチ』ブックオブザイヤー 2018受賞、オリコン年間BOOKランキング タレント&コミックエッセイ2018でも 1位を獲得しています。

 

 

ZOOMミーティングの打ち合わせをする前に、事前の予習として、山田さんの出自と仕事履歴を見てみました。

 

すると、多くの表紙デザインが、ネット上にはゴロゴロ出てきます。奇妙な事に、その絵柄は、ほのぼの系、CG調、オタクアニメ女子風など、色々な絵柄が出てきました。

 

「ずいぶん、多彩な才能で、色々な絵が描ける人なんだな…」と思いながら、リモートミーティングに参加しました。

 

そこで分かった事は、恥ずかしながら、全く知らなかったのですが、表紙を作り込んでいく際、デザイナーさんは、構図を考えるだけです。実際の描画は、「イラストレーターさん」が別にいて、デザイナーさんは、指示書を出すだけだったのです。

 

道理で、多種多様な絵柄が存在していた訳です。

 

ZOOMの席上、「分業制だとは、全く存じ上げませんでした」と話した所、

「先生の業界だって、歯科医師の先生がいて、その指示書に従って、技工士さんが歯を作るでしょ…同じですよ」と、諭されました。

 

「御説ごもっともです」一本取られました。

 

デザイン案をどうするか?について、出版社の編集者に頼み込んで、著者である私も、飛び入り参加するようにお願いした所、快く引き受けてくれました。

 

デザイナーさん、どんな方なんだろう?と思いながら、パソコンの前に現れた方は、30歳前後の、超チャーミングな女性の方でした。

 

私との談笑を交えて、著者のヒアリングをしてくれているようです。

「それでは」と、遠慮なく、自己プロフィールを述べてみました。

 

オタクで、偏屈で、ボッチな所も、堂々と打ち明けます。

 

デザイナーさんの問診の中で、「どんなキャラが好きですか?」との質問が来たので、

「ほいキター」とばかりに、あらゐけいいち氏のシュールなギャグアニメ、『日常』に登場する、ロボの「東雲なの」ちゃんがタイプであることを伝えました。

 

さすが業界人です。あらゐけいいち氏の事も、チャンとご存じのようです。

すると、こんな感じですか?と、あらゐ氏に寄せたイラストレーターさんの候補を、複数名ピックアップしてきます。

 

イイ感じで、調子が出てきました。

 

その間、出版社の編集者さんは、ニコニコして聞き役に回っています。

 

続いて「好きな映画のジャンルや、出版物はありませんか?」との問い合わせに関しても、ほいキターとばかりに、子供の頃から、特撮映画が大好きで、一時期は、映像制作の分野を専門職にしようか?と、真剣に考えた事も伝えました。

 

デザイナーの山田さんも、エヴァンゲリオンも参考にしているとの話が出てきたので、もう、年齢・性別の枠を超えて、「オタク談義」が始まります。

 

その中で、私の方から、「実相寺アングルをご存じですか」と聞いてみた所、当然のごとく、「こんな感じの取り方ですよね」との返事が返ってきます。

 

実相寺アングルとは、巨大感・密室感・異世界感を演出するために、わざと画面を斜めに傾ける、一つの構図の中で、カメラと被写体の間に別の物挟み込む、あるいは、超広角・超ロングを採用したアングル撮影の事です。本手法は、映画、テレビ、アニメ、劇画などに、多くの影響を与えました。

 

 

 

後年のインタビューの中で、「なぜ、実相寺アングルは生まれたのですか?」との取材で、

 

● ウルトラマンなどの、テレビ特撮物は、予算も限られ、セットなども豪華に用意する事が出来ません。その中で、出来るだけ、巨大感・スピード感を演出すための、苦肉の策であった事

● 毎週放送するテレビは、役者さんを1年間拘束するので、人気のある役者さんは、やりたがりません。また、主人公の役者さんも、新人である事が多く、セリフの言い回し、表情の変化などの演技が未熟な部分があり、一つのフレームの中で、アップの撮影が難しい背景がありました。出来るだけ、画面の隅などに配置する必要があり、その他の画面を、何か別の物で埋め合わせする必要性が生じた時に、電話越しに、机の隙間から覗き込むように撮影すれば良い事が分かり、このアングルを採用した。

 

などの経緯を説明していました。

 

今回の拙書のデザインにも「実相寺アングル」を採用できないか?と、提案した所、デザイナーさんは、「こんな感じですか?」と、ラフスケッチを書き起こします。

 

それは、下目線でスマホを持つ女の子を、スマホ越しに下から煽るような構図で描かれ、女の子の表情も、どこか不安げでした。

 

「これ、これ、これですよ」

 

アイデアが舞い降りた瞬間でした。

 

その後、編集者の方が間に入り、「先生はココで退席です」「後は、こちらで話し合い、後日、最終案を提示しますので、少々お待ちください」という事で、私の飛び入り参加は終了です。

 

そして、後日上がってきた表紙デザインは、こんな感じに仕上がっていました。

 

 

イラストレーターさんは、人気作家の松本うちさんです。

 

既に似たような構図の作品があるようです。

 

 ふざけんなよ… (C)てん、松本うち/KADOKAWAより引用

 

実用書は、平積みで陳列する中で、目立たなければなりません。手に取ってもらえるかどうか、2秒で決まるでしょう。タイトルも含めて、イメージに近い感じの仕上がりでした。

 

【もの作りで思う事】

今回の経験で思う所は、何か新しいものを生み出す時は、

 

「自分の中にある、こだわりの材料でしか作り出す事は出来ない」

 

というものです。

 

現在地点から、過去を振り返ってみた時に、

●特撮好きだったことも

●オタクアニメが好きだったことも、

 

それらのパーツは、チャンと意味がある事だったのです。

 

子供の頃…

「おぅ、中城、一緒に野球やろうぜ」

「ごめん、今日はいけない」

「ほっとけ、ほっとけ、あいつオタク病だよな」

 

の全てには、意味があったのです。

こうした、著者の意見を反映してくれる出版社は、本当に有り難いです。何とか、多くの読者に届くことを願っています。