当院の新しい漢方ラインナップ「桂枝五物湯」について

 

私の専門は、東洋医学です。30年以上前より、歯科口腔領域の疾患に対し、漢方処方をしています。また、好きが高じて、39歳の時に、夜間専門学校に通って、鍼灸師の国家資格も取得しました。

 

時には症例に応じて、ツボ刺激療法も取り入れています。

 

また、口臭が専門になって、15年、体質口臭の患者さんに対し、30種類以上の漢方薬を駆使し、サジ加減を調整しながら、オリジナル処方をしています。

 

そんな中、定期的に訪問してくる、漢方薬のプロパーから、

「この漢方薬を使ってみて下さい」という、ニューカマーを紹介されました。

「桂枝五物湯」です。

 

本剤は、歯周病、歯肉炎、歯槽膿漏で、歯肉が腫れる・出血する・膿が出る・歯がグラつく・口臭が気になる、頬、舌、歯肉に出るアフタ性口内炎など、口内の急性炎症症状に効果が見込めます。

本方は、別名:桂枝桔梗湯とも称されます。「吉益東洞先生」が重用した名処方です。

 

 

『勿誤薬室方函』の古典には、

「上衝(じょうしょう)、咽喉刺痛、或いは瘡(そう)を生ずる者を治す」

「牙歯疼痛する者を治す」

「血毒の上に迫る者を治す」

「両頬腫痛、或いは舌の強ばり主治する」と記載されています。

イメージとしたら、交通渋滞で、車が「押しくら饅頭」状態になり、その鬱滞している部分に、熱が発生しているような感じです。

 

 

その熱源は、血熱、肺・胃腸の実熱、乱れた気による鬱熱が上衝したことにより、体の上半身で、特に毛細血管が多く集まる口中に、炎症として症状が出ている病態です。

その熱源に、火に油を注ぐ生活習慣が、飲酒・喫煙・ストレス・イライラです。その他、口内に微細な傷をつけてしまうような、不適合な入れ歯、歯冠修復物も、症状を繰り返しやすいです。加えて、口内の衛生状態が悪く、歯周病を罹患している方は、より、熱を抱えやすい傾向にあります。

これは、便秘で、なかなか排便が出来ない時に、お腹に力を入れて、「う~ん」と、気張ります。すると、顔も真っ赤に紅潮してきます。ようやく便が出たあと、肛門が切れてしまうかもしれません。気張ることは、どこかにキズや熱を持ってしまうのです。

 

また、炎症を抱えている部位は、ブヨブヨした「浮腫」による、炎症性のむくみにも、本剤は効果があります。

 

こうした患者さんの口臭は、官能検査をしてみれば、すぐに分かります。

初期症状の臭いは、血生臭いような口臭から始まり、

炎症がひどくなると、金魚鉢臭、ザリガニ臭に変化し、

炎症から膿瘍、壊死・壊疽が起きると、河川のどぶ臭、お風呂の排水溝の臭いに変化します。

 

特に、壊疽臭は、一度嗅いだら、生涯、忘れない臭気です。

 

【処方構成】

ケイヒ:4.0g、キキョウ:4.0g、ブクリョウ:8.0g、オウゴン:4.0g、ジオウ:4.0g

というシンプルな構成です。

 

【処方解説】

桂皮は、渋滞している血脈を疎通し、茯苓との組み合わせることで、上逆した気を、スムーズに下降させることで浮腫を除く。

桔梗は、排膿作用で腫膿を治すとともに、引経薬として、薬物の作用を上部に引き上げる。

地黄は、上焦の湿熱を清する。

黄芩とともに瘀熱を解し、止血を促す。

全体として体の上部の熱を鎮めて、口腔内の炎症を改善することができる。

 

これから、この症状に合った患者さんに、積極的に処方してみようと考えています。