そば粉アレルギーと漢方薬

 

普段臨床をしていると、アレルギーをお持ちの方を拝見する機会があります。

漢方薬は、植物由来の生薬から構成されるものが多く、良く問診をしないと、大きな健康被害に発展してしまうケースがあります。

 

その為に、初診時に患者さんに、以下の様な問診をするように心がけています。それは、

「最初に伝えておかなければいけない事はありますか?」

「何かの持病があって、お薬手帳を持っていますか?」

「治療を進めて行く上で、不安な事はありますか?」

などです。

 

ただこのようにお伺いしても、患者さんは、緊張と遠慮で、ビックリする位、自分の事を言い出せない時があります。

 

先日もこんな事がありました。今回は患者さんからの了解を経て、ブログで考察してみます。

私との問診では、「特に心配をする事はありません」との答えだったので、いつものように、漢方薬の処方箋を記載して、近隣の薬局さんへ出向くように指示し、調合してもらいました。

 

直後に、薬局の管理薬剤師さんから電話が入り、

「この患者さんには、アナフィラキシーショックを起こす程の…そば粉アレルギーがあるようです。」

「この処方構成で大丈夫ですか?」

との指摘を受けました。

 

「特に問題ありません」と安易に返答すると、後で大変なことになってしまうので、大急ぎで、そば粉との拮抗作用・相互作用を調べる事になります。

「ちょっと調べるので、患者さんには、薬局の受付で待つように指示して下さい」とお願いします。

基本的に、処方した生薬の「〇〇科」の属性を調べて、蕎麦の実の「属」と合致すれば、その生薬は避けた方が良いので、私が処方した生薬の中に、同じ科の植物があるかどうか?速攻で調べます。

 

【そば粉とは】

そもそも「そばの実」は、タデ科の植物で、立派な生薬です。 

 

 

その中でも、成熟果実から取り出した種子を乾燥させたものを「蕎麦」(きょうばく)と位置づけ、特に打撲、腫れ物に外用します。加えて、茎葉からは、蕎麦桔(きょうばくけつ)が生成され、消腫や止血に応用されます。

 

加えて、全草にルチンやフラボノイド成分を含むことから、毛細血管を健常に保ち、高血圧・動脈硬化・脳血管障害に効能があります。

 

【タデ科の生薬】

① まず、何と言っても「大黄」(だいおう)が上げられます。言わずと知れた便秘薬で、抗菌、利胆、止血作用を有します。

② 何首烏(かしゅう):つるどくだみの根塊で、日本全国で、雑草のように自生していますが、立派な生薬です。アントラキノン類のエモジン、スチルベン配当体、タンニンなどが含まれ、血中コレステロール低下、血糖降下や感染症予防などの効能を有します。

③ 藍葉(らんよう)・藍実(らんじつ):その花と実には、消炎・解毒・解熱作用などがあります。染料として用いると、防虫効果を持った生地になります。

 

今回、そば粉アレルギーの方に処方した漢方薬には、幸い、タデ科の植物は無かったです。実際に、服用後の体調の悪化の報告も受けていません。一安心しました。

 

やはり、患者さんには聞くだけではなくて、「答えを引き出しやすい」雰囲気作りも必要だな…と、改めて学び直しました。