3月某日、数か月に1回、外回りの営業で立ち寄ってくれる営業マンから「試供品」を頂きました。
参楂神(さんざしん)になります。
生薬を用いていますが、分類は「食品」扱いになります。
●山楂子エキス
●米こうじ粉末
●麦芽エキスのシンプルな構成です。
私はサンプルでもらった試供品は、必ず1回は実際に服用(摂取)し、味を確かめます。
薬の味には、「気味が宿る」と解釈され、直感的に「美味しい」と感じたものは、自分の身体にとって、マッチングが良い事が多いです。
参楂神の味は、程よく甘みと酸味があるので、嫌いな味ではないです。飲みやすいので、その他の漢方処方の「隠し味」として合方し、生薬の吸収効率を上昇する事も期待できそうです。
【山楂子】
山楂子は、春には白い花が咲き、秋には赤い実がなります。バラ科の植物で、観葉植物・食用・生薬にも用いられています。そのサンザシの果実を乾燥させて生薬にしたものは、啓脾湯などに用いられています。
名前の中の「子」は、一般的には実としてなる果実の事ですが、一方で、「棘」(とげ)の意味もあり、山楂子は、キリストが十字架に張り付けになった時に、頭に被せられた「イバラ」は、山楂子だったのではないか?という諸説もあります。
成分は、アミグダリン、クエン酸、ビタミンCなどを含みます。
効能は、食物が消化されず消化管に滞っていて、ムカムカした感じの「食滞」「食積」を改善し、消化を助けます。特に、肉類などの脂っこい食事を溶かす作用が見込まれます。加えて、気をめぐらして「気滞」「気鬱」をスッキリさせ、気滞から誘発する、ドロドロ血の「血瘀」も主治します。
【米麹】
一般的に麹と言われるものは米、麦、豆類、穀類と、その麬(フスマ)、糠(ヌカ)に、糸状菌を定着させたもので、麹をベースとして、酒、味噌、醤油などの発酵食品の製造に活用されています。
その中でも、薬用として用いられるものを「神麹」(シンキク)と言う生薬として用いられ、胃腸の調子を健常に保ち、消化不良や食欲不振などの効能を有します。
神麹は、医療用漢方製剤の中では、半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)や
加味平胃散(カミヘイイサン)に組み込まれています。
「神麹」は、酒・味噌・醤油と異なり、生薬として用いられる時の決定的な違いは、小麦をベースに赤小豆(アズキ)、杏仁(アンズ)、青蒿(クソニンジン)、蒼茸(オナモミ)、野蓼(タデ)など、薬用植物を加えて、発酵の工程をさせる所です。
この事から、神麹には、抗肥満作用や血糖値上昇抑制作用が認められています。
本商品の品名に、「神」の字が使われているのは、こうした理由による所です。
【麦芽】
麦芽も立派な生薬で、イネ科、オオムギの実を発芽させた穎果(えいか)のこと。
麦芽の中には、タカヂアスターゼと言う酵素が含まれ、食品の栄養素の内、デンプン質を分解します。ヒトから分泌される「アミラーゼ」と言う酵素の動揺の働きがあります。
一般的に、麦由来の穀物には,麦、大麦、ライ麦などがあります。面白い事に、全てイネ科の植物ではあるものの、異なる「属」に分類されています。
オオムギの実(穎果)を、発芽させて「麦芽」になります。デンプンがアミラーゼによって分解されると、甘みのある麦芽糖(マルトース)になります。この性質を応用して、もち米(粳米)と麦芽を合わせて、「水飴」が作られました。そして、何を隠そう、水飴を乾燥させて、膠飴(こうい)と言う生薬が生成され、胃腸の調子を健常に保つ、「大建中湯」(だいけんちゅうとう)に配合されています。
3種の配合は、食品ではなく、もはや漢方薬と名乗っても問題ない位の構成です。ただ、薬品として国に対して申請するとなると、かなりハードルが上がるので、扱いやすい食品として、今回は市場に出したのでしょう。
日常臨床に、導入できないか?検証してみます。