過日、患者さんから、腸カンジダと口臭の発生の因果関係を質問されたので、関連性を考えてみたいと思います。
人体には、常在菌として、さまざまな菌を抱えて生命活動を営んでいます。菌が作る代謝産物や毒素によって、ヒトに悪い影響を与えると「悪玉菌」と位置付けられ、良い物質を作ると、「善玉菌」と解釈されますが、
菌にとっては、悪い事をしている自覚は無く、人類が勝手に名札を付けているだけです。
その中で、「カンジダ菌」が存在しています。主に、消化管を中心として、粘膜質な所に巣くっています。口腔・胃粘膜・腸管壁・膣などに存在しています。
こうした部分は、外であって内、内であって外の部分があり、汚れやすい環境に晒されています。口内にも、カンジダ菌感染症による粘膜疾患があり、歯肉・口唇の粘膜に潰瘍を形成したり、舌痛症を引き起こしたりします。
基本的には、清潔に保つ必要があるのですが、常在菌と言う性質上、誰でも抱えているにも拘らず、症状の出る人と、症状の出ない人がいます。
これは、何故でしょうか?
カンジダ菌は、粘膜質な所に常在します。口腔カンジダ菌も存在し、菌が多くなると、粘膜疾患を誘発します。
歯科保険診療の点数にも、カンジダ培養検査は、算定項目が存在しています。
実は、口腔から始まり、肛門まで続く消化管は、ビローンと伸ばすと、1本の管になります。
外であって内、内であって外の性質があります。特に飲食物などにさらされるので、非常に汚れ安い器官です。
例えば、口内の歯垢を採取し、生理食塩水で培養して、血管の中に直接注射すると、一発で敗血症になって、あの世行きです。
その為に、生体は防御機構があり、口腔粘膜にも、胃粘膜にも、腸管にも、免疫グロブリン(IgA抗体)が分泌され、外邪が身体の中に入る事を防いでいます。
一方、腎臓や肝臓など、身体に内包される器官には、免疫グロブリン(IgA抗体)は存在しません。(IgG抗体などは存在します)
カンジダ菌は、大なり小なり、粘膜質に存在し、それ自体は、避けようがありません。
薬で殺菌しても、すぐに勢力を拡大してきます。
それでは、症状の出る人と、出ない人の差は何なのか?と言うと、実は、免疫グロブリンが正しく働いているか?が、臨床的には重要になってきます。
免疫グロブリン(IgA抗体)が正しく作用していれば、カンジダ菌が存在していても、粘膜に大きなダメージを与えません。
そして、ここからが、超重要になってきますが、
「IgA抗体」を元気にさせる方法は…
●発酵性食品の摂取、
●野菜や魚を丸ごと食べる
●食物繊維の摂取
●ビフィズス菌により、短鎖脂肪酸を活性化させる、
などの食生活で、IgA抗体は、活発になります。
カンジダ菌はいても良いので、
症状の出ない防御機構を作るのが重要な訳です。
もちろん、IgA抗体は、口内で発生する口臭にも役立っています。
【口臭とカンジダ症】
カンジダ菌は、炎症誘発物質も産生します。歯肉・舌粘膜にさらされると、微細な炎症が起きてきます。やがて、他の悪玉菌が、破綻した毛細血管に染み込むと、炎症の「アラキドン酸カスケード」と言う悪循環機構により、どんどん、炎症が助長します。
炎症が起きている所には、出血を伴います。
実は、口臭発生菌は、血液の成分が大好きで、ドンドン増殖を繰り返し、代謝産物を吐き出します。その中に、臭い物質が含まれているので、揮発性硫黄化ガス(VSC)を伴う口臭症になっていくのです。
口内を清潔に保ち、バランスの良い食生活で、口内環境は健全に保たれます。
普段と違うニオイがするな…と感じたら、歯科医院で、カンジダ検査を受けると良いでしょう。