映画「Winny」を見て、訴訟の事を考える(ネタバレ含みます)

 

アマゾンプライムビデオで、映画「Winny」を視聴し、思う所があり備忘録として記録しておきます。東大の研究員だった、金子 勇さんが、動画共有ソフトの「Winny」を公開した事により、騒動が起きます。

 

このソフトを使えば、映画やテレビ番組、画像などが、サーバーを介さず、皆で共有できる、画期的な機能を持っていました。

 

現代風に言えば、「神ソフト」を作ってくれて、有難う!と言った所です。

 

半面、ユーザーが、映画などを違法でアップロードした場合、著作権侵害になってしまいます。劇中でも、違法アップロードした方が捕まるシーンがありました。

 

その中で、大きな問題が出てきます。

 

劇中でも語られていますが、例えば殺人犯が、ナイフや野球のバットを使って、殺人事件を起こしました。この時、ナイフやバットを作っている製造メーカーが、「罪に問われるか?」と言う部分が争点になり、ナント、開発者の金子さんは、逮捕・拘留されてしまいます。

 

逮捕された後、早く保釈してもらいたいとの思いから、取調官の誘導に乗って、調書を作成したことから、保釈が認められます。

 

この時に書かされた調書の中に、「蔓延」という記載が、何カ所も出てきます。金子さんは、自筆の文書で、「まん延」と記述した事から、これが、のちのち、重要な争点になっていきます。

 

その後の、ネット民の動きは素早かったです。「神」と崇拝される金子さんには、続々と支援金が集まります。現代で言えば、立派なクラウドファンディングです。こうなった時の2chの民は、物凄く結束が固いのです。あっという間に500万円が集まりました。個人的には、この映画で、一番ホロリとさせられるシーンでした。

 

保釈後、その資金を使って、弁護士が用意したホテル住まいが始まります。

 

ただ、金子さんにとっては、重要な問題が起こってしまいます。

裁判の係争中は、証拠品たる「Winny」のプログラムを書き換え、改変する事は許されません。

 

劇中、「これでは、牢屋にいる時と、何ら変わらないじゃないですか!」と言う葛藤が始まります。

 

本当に残念な点は、もし、このWinnyが、世界中に拡散していれば、今の世界の情報の勢力図は、変わっていたのではないか?と思う点です。現在、世界ではGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)が、ネット環境を牛耳っています。

 

我が国の司法は、裁判に持って行ったことで、金子さんのプログラマーとしての才能を奪ってしまった罪は重いと言えます。

 

しかも、一審は有罪判決となり、罰金が言い渡されます。

弁護士は、「罰金を払って罪を償えば、好きなプログラム生活が再開できるのですよ」と促しますが、金子さんは断固として断り、上告します。

 

その根底には、「ここで負けたら、これから出てくる、日本人の若いプログラマーの才能を摘んでしまうことになる」と諭すシーンで、2回目のホロリになりました。

 

最終的には、二審で勝訴するのですが、運命とは皮肉なもので、ようやく、思いっきり新しいソフト開発が出来る…と思った矢先、半年後に、心筋梗塞で早逝してしまいます。

 

翻って、もし、私が裁判で訴えられたらどうするだろう?と、自問自答をすると、

 

●勝負事は嫌いじゃないので、訴えられたら、可能な限り有利に進めるために、あらゆる手を尽くして「ファイティングポーズ」を取ると思います。

●ただ、裁判となると、金子さんの例を上げるまでも無く、かなりの時間とエネルギーを使います。もしかしたら、私の健康を損なう事態になるかもしれません。

●結局のところ、争う事は無く、相手と折衝案を模索し、穏便に事を済ます流れに落ち着くと思います。

 

口臭が専門になって、17年、幸いなことに、訴訟に発展する所までこじれた事はありません。

ただ、いつでも「戦いが起きるかもしれない」と言う、「危機管理」だけはしておこうと思っています。