過日、WEB記事を運営している、FNNプライムオンラインから取材を受けました。
テーマは、「コーヒーとタバコが、口臭に与える影響」についてです。
過去にも、同様の取材を受けて、レポートにまとめていますが、新しい知見も追加されたので、今一度、特集してみたいと思います。
【コーヒー口臭のメカニズム】
●第一段階:含硫アミノ酸が入っている食材が、口内に入ると、口臭発生菌は、アミノ酸の部分を食べて、引っこ抜いていきます。これを、脱アミノ反応と言います。その残った、「含硫」の部分が、口臭に変化していきます。システインからは、硫化水素が、メチオニンからは、メチルメルカプタンが発生してきます。
●第二段階:加えて、カフェインによって、交感神経が優位になると、唾液量が減少し、一時的に、口臭発生菌の増殖を招きます。菌は、増える時に、代謝産物を吐き出します。その中には、「酸性物質」「臭気物質」が含まれ、口臭につながります。
●第三段階:さらに、「クロロゲン酸」により、口内環境の㏗が、酸性に傾くと、歯周病菌が元気になり、増悪因子の一つになります。歯周病を抱えると、歯肉周囲が出血傾向になり、血液中のアミノ酸をエサとして、さらに口臭発生菌の増殖を招き、コーヒーを飲んでいなくても、常にニオイを発する口内環境に傾きます。
【なぜ、コーヒー口臭は不快なのか】
炒りたてのコーヒーは、良い香りがし、食欲をそそりますが、口内に入ると、何故不快感が出るのか?と言うと、実は、コーヒーは、酸味と渋みを有します。酸味は口内を酸性に導き、渋み(タンニン)は、ムチンを剥がします。ムチンが無くなると、粘膜上の保湿が失われ、臭気物質の残留傾向が増加します。さらに、ミルクや砂糖が加わると、舌表面に残留し、舌苔に吸着し、ニオイの温床が出来上がります。飲んだ直後は、コーヒーのよい香りが残っていますが、やがて、焦げ臭い焙煎成分とミルク(含硫アミノ酸)や砂糖が分解された臭気が、混然一体となって、コーヒー口臭に変化します。
このコーヒー口臭は、もはや、本来の口臭とはかけ離れ、硫黄の様な、魚の臓物臭の様なニオイになっていきます。
【コーヒー口臭を悪化させる因子】
クロロゲン酸は、食後に飲めば、胃酸の分泌を促進し、消化を助けますが、空腹時に飲むと、胃粘膜を荒らします。胃粘膜が有れると、舌苔を助長する時があります。東洋医学では、胃に負担がかかる体質を、「痰湿」「食積」と解釈します。舌苔は、口臭発生菌の温床となります。この舌苔の色も重要で、白い苔→黄色い苔→茶色い苔→焦げ茶色の苔→黒い苔になるにつれて、口臭もきつくなります。加えて、牛乳やミルクにも、含硫アミノ酸が含まれているので、多く混入すればするほど、口臭発生のリスクは高まります。
【1日の目安は】
諸説がありますが、毎食後に加え、仕事中を含めて、1日5杯程度が目安でしょう。カフェインの摂取目安は、200~400㎎なので、5杯を超えると要注意です。
【コーヒー口臭の出やすい人と、出にくい人の差は】
口内の悪玉菌と善玉菌の菌バランスが、超重要。善玉菌は、
●発酵性食品の摂取(善玉菌:ロイテリ菌増加)
●唾液を良く出す(善玉菌:サリバリウス菌増加)
悪玉菌は、
●白砂糖を使った菓子類を食べない(悪玉菌:ジンジバリス菌の抑制)
の生活習慣で、菌バランスが整います。
また、焙煎度の高いコーヒーより、浅炒りの物を好む。ドリップコーヒーの場合、時間がたつと、酸性度が増すので、早めに飲むのが重要。
【予防法は】
口蓋皺壁のゴシゴシ清掃、スマホの長時間使用を避ける、唾液分泌体操、唾液の質を良くするなどで予防が可能。おススメ食材は、タンパク分解酵素を含んだ、パイナップル、保湿のムチン成分を含んだ、酢昆布などを口に含み、舌先で押しつけ、口腔粘膜を「雑巾がけ」するように擦り付けると、臭気が取れる。
【たばこ口臭のメカニズム】
コーヒーとは全く機序が異なります。
タバコによる口臭は、主にタール、ニコチン、一酸化炭素によって引きおこされます。
① タール
タバコのヤニの主成分で、多くの化学物質を含み、多数の発がん性物質で構成されています。こうした成分には、どぶ臭・し尿臭・魚の臓物臭と同じ成分があり、たばこ臭その物が、口臭の主な原因になります。加えて、タールは粘着性が高く、ヤニとして、口内に残留し、長時間にわたって臭気を発生させます。
② ニコチン
元来ニコチンは、強い神経毒があり、その毒性は、青酸カリよりも強い。致死量は、体重1㎏で0.5~1㎎で、半数の人が死亡します。非常に依存性が高い物質です。特に、血管収縮作用があり、歯肉周囲の末梢循環障害を招き、歯肉の代謝阻害により、歯周病を悪化させます。全身的には、血圧上昇・唾液分泌量低下からくる、ドライマウス(口腔乾燥症)により、口臭発生菌の増殖を招き、口臭の悪循環に陥ります。
③ 一酸化炭素
血液中のヘモグロビンは、酸素と結びついて、全身の働き絵雄健常に保つ役割をしていますが、一酸化炭素は、200倍以上もの割合で、ヘモグロビンと結合し、中毒症状を起こします。この事により、体内の酸素濃度は、著しく低下します。すると、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患しやすくなります。この治療薬には、抗コリン作用の副作用がある物が多く、唾液の分泌を減少させます。最終的には、口臭発生菌を活性化させ、常時口臭が出やすい口内環境に傾きます。
【電子たばこは、代用になるか?】
長期的なのデータは、少ないですが、人工的な疑似たばこは、不明な成分が含有されている可能性もあり、「タバコを吸っているのと大差ない」と、医学界では捉えています。
●電子タバコ…ニコチンを含んだ調整液体を、加熱してそのガスを吸う
●非燃焼加熱式タバコ…タバコの粉末を混合したシートを加熱してそのガスを吸う
と言う作用であり、歯周病増悪因子のニコチンの摂取量に関しては、充分な検証がなされていません。最新の報告では、日本歯周病学会の公式見解では「通常のタバコよりも口腔内への有害作用が大きいものもある」とも報告されている事から、たばこの代替にはならないと思います。
【たばこ口臭を、少しでも予防するには】
肺まで深く吸わず、ふかす程度にとどめる。根元まで吸わない。そもそも、ニオイを消すには、吸着・分解・中和・マスキングでしか消臭できない事から、
●吸着を期待して:牛乳、食物繊維を好んで食べ
●分解:タンパク分解酵素を有するパイナップルの摂取、
●中和:唾液の緩衝能により、口内の㏗を中性に保つために、抱き分泌促進
●マスキングを期待して、洗口液・ガムを併用すると、たばこ口臭は軽くなります。
嗜好品類は、なかなか止めることが出来ません。賢く使って、少しでもニオイを抑えるように、生活習慣を整えましょう。