女性ホルモンと口臭

 

最近、患者さんからの問い合わせで、ホルモンバランスと口臭の相関について問い合わせがありました。今回、西洋医学と東洋医学の両面から考察してみたいと思います。

 

【西洋医学的側面】

女性の場合、ホルモンバランスの変化で、生理的口臭が出やすくなる場合があります。

一見、「ホルモン」と「口臭」には、関係がなさそうです。ではなぜ、ホルモンバランスが崩れると、口臭が出てしまうのでしょう?そこには、エストロゲンの増減が、大きく関与しています。

実は、このホルモンは、女性の生理周期を保つ以外にも、肌や髪の毛のハリやツヤを、身体の細胞のターンオーバーに関与する働きがあります。 

「若さを保つ」…ホルモンという一面があります。

 

そして、生活習慣の不摂生や加齢により、ホルモンが減少すると、全身の潤いが悪くなり、肌や口内が乾燥してきます。

 

唾液には、免疫物質・抗菌物質・保湿成分などが含まれ、分泌が正常に保たれていれば、口内の菌バランスは安定しています。ところが、唾液の分泌が滞ると、口腔内常在菌が一気に増殖し、虫歯・歯周病・口臭のリスクを高めます。 

女性のライフサイクルの中で、ホルモンバランスが変化する時期には2つあり、思春期と更年期が相当します。 

どちらの時期も、イライラする、倦怠感がある、急な火照り(ホットフラッシュ)、生理不順などを感じたら、ホルモンバランスが乱れているので、婦人科を受診する必要があります。

 

【東洋医学的側面】

漢方の考え方には、「ホルモン」と言うものは存在しませんが、女性の「血の道症」に近い考え方があり、貧血傾向の場合は、「血虚」、ドロドロ血の場合は、「瘀血」(おけつ)の体質が関係していると解釈します。

 

●血虚の場合は、慢性疲労、生理不順、顔面蒼白、髪の毛のパサつきを伴い

●瘀血の場合は、不妊、帯下、関節痛、冷え。のぼせを伴います。

 

漢方処方では、

●血虚は、十全大補湯、当帰芍薬散

●瘀血は、女神散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散 などを処方します。

 

【女性ホルモンの増やし方】

投薬でもしない限り、飲食物の摂取で、いきなり女性ホルモンが増える事はありません。ただ、食品の中には、女性ホルモンのバランスを整え、女性ホルモンと似たような働きをするものもあります。

 

それが、「大豆イソフラボン」と「エクオール」です。

●大豆イソフラボンは、女性ホルモンの「エストロゲン」に似た構造式を持ち、身体の中で、女性ホルモンと似た作用する事が分かっています。思春期の女性が、初潮を迎えた時に、お祝いで「お赤飯」を食べる習慣には意味があったのです。

 

また、高齢になり、エストロゲンの分泌量が減少した事で、更年期障害になると、心身ともに身体が変調を迎えます。そんな時に、大豆食品は、更年期の諸症状を和らげます。

 

●エクオールは、大豆イソフラボンから派生した成分です。大豆イソフラボンは、「ダイゼイン」「グリシテイン」「ゲニステイン」の3種類で構成されています。

 

この中で「ダイゼイン」は、腸内細菌叢によって代謝を受けると、「エクオール」と言う物質に変化して、体内に吸収されます。ここで重要なのは、腸内に、「エクオール酸性菌」がいないと、せっかく大豆イソフラボンを摂取しても、エクオールに変化できません。

 

腸内で善玉菌を増やすには、発酵性食品の摂取や、以前もご紹介した、漢方由来の発酵性食品「カイギョクコウ」の摂取を心がけると、吸収効率が高まります。

 

また、補助的に、女性ホルモンのバランスを調整してくれる食品もあります。

 

●オメガ3脂肪酸は、必須脂肪酸の1つで、体内で合成できません。

えごま油、アマニ油、魚卵(イクラ、タラコ)、青魚(サバ、サンマ、ニシン)に含まれます。

 

●コラーゲンは、体内のタンパク質の30%以上を占める重要な栄養素です。また、その40%ほどが、肌に存在しており、肌の肌理・シワ・ハリに関係しています。女性ホルモンが不足すると、真っ先にコラーゲンが影響を受けます。

豚肉、手羽先、うなぎ、ふかひれに含まれます。

 

●亜鉛・鉄分

微量元素の亜鉛・鉄分は、女性ホルモンを作り出す時に必須の栄養素です。

鉄分は、体内に取り込んだ亜鉛を、ヘモグロビンと結合して、全身に送り届けます。亜鉛は更年期障害の症状を緩和し、鉄は月経による貧血予防にも効果が見込めます。

鉄分が多く含まれている食材は、レバー、ほうれん草、めざし、ココア

亜鉛が多く含まれている食材は、生牡蠣、きな粉、切り干し大根、煮干しなどです。

 

身体は、心身のバランスが欠如した時に、「ニオイ」のシグナルサインを出して、その変調を知らせます。普段と違うニオイを感じたら、食事を見直してみても良いでしょう。