口臭で悩む方への鍼灸的アプローチについて

 

口臭治療が専門になって16年、色々な症例に接してきました。当院の場合は、「体質口臭」も視野に入れて、口内が原因ではないニオイの発生に対して、漢方薬を処方する事で、お悩みの解決をしてきました。

 

手前味噌ですが、39歳の時に、鍼灸の夜間専門学校に3年間通い、国家資格として、「鍼灸師」のライセンスも取得しました。

 

今まで、漢方処方については、このブログでも触れてきましたが、口臭で悩む患者さんに対し、「鍼灸治療」を行った症例に関しては、あまり紹介してきませんでした。

 

何故かというと、鍼灸治療をする前と、した後で、客観的に評価できる指標が少なく、単に、患者さんからの「おかげで、良くなったよ」と言う、主観的な評価でしか、治療効果が判定できないからです。

 

今回は当院で、どの様なケースで、鍼灸治療を応用しているのか?について触れてみましょう。

 

【鍼灸治療が有効な口臭症例】

実は、当院の口臭対策プログラムで、鍼灸治療は、いきなりは登場しません。通常の除菌療法や漢方処方がメインである事に変わりはないです。それでは、鍼灸治療が必要な症例は、どの様な場合か?と言うと、下図をご覧ください。

 

2診目に、口臭は最も強く、

●硫化水素:505ppb

●メチルメルカプタン:412ppb

●ジメチルサルファイド:0ppb

をカウントしていました。これは、対面での会話で、ニオイが届くレベルです。

 

定型的な口内口臭と体質口臭の症例です。

患者さんには、まず初めに「除菌療法」と「オリジナル漢方」を指示しました。

治療効果は切れ味良く出始め、5診目には、

●硫化水素:62ppb

●メチルメルカプタン:26ppb

●ジメチルサルファイド:4ppb

まで、減少傾向を示し。全ての臭気物資は、ヒト嗅覚で分かり始める認知閾値以下に収まりました。臨床的には、充分改善した「成功症例」です。

 

ところで、口臭治療の改善には、2通りの考え方があると思います。

1.「客観的」な測定値の減少による改善

2.「主観的」な自己評価による改善

 

●医療機関サイドとしては、測定値の減少を持って「治った」と判断しますし、

●患者さんサイドは、相手の素振りの変化(顔をそむける・咳き込む)で「治った」と実感します。

 

上記の症例の場合、医療機関サイドとしては、充分な減少傾向が確認され、私の嗅覚による官能検査でも、ニオイを感じなくなっていたので、「だいぶ良くなりましたね。もう鼻に付く口臭は感じません」と言う評価を出しました。

ところが、

患者さんサイドからの自己評価は、「まだ、全然治っていません」と、言い張ります。

 

両者の異なる評価を、突き合わせて整えなければなりません。

こうした症例の場合、当院の場合、赤↓部の所から、「鍼灸治療」が始まります。

 

ここから、本当の口臭治療の始まる…と言っても過言ではありません。

 

【改善が実感できない方の体質】

客観的な数値が下がっているにもかかわらず、実感が伴わない方の体質は、「肝気うっ結」である事が多いです。

こうした体質の方は、身体の随所にシグナルサインが出てきます。

 

1.診療の時、常に「眉間にシワ」が寄っています。

自分では自覚がないことが多いのですが、人相が険しい方が多いです。問診の中で、色々お悩みをお伺いすると、子供が受験勉強の最中、姑とのいざこざなど、何らかのストレスを抱えている事が多く、その心配事が引っ掛かり、表情も自然に眉間にシワが寄ってしまうのです。

 

2.診療台に乗る時の姿勢

患者さんの中には、歯科の診療台に座り、背もたれを寝かせた時に、椅子の背部分に自分の背中を預けることが出来ない方がいます。自分の腹筋を使って、一所懸命、身体を浮かせ、背もたれとの間に「隙間」が出ているイメージです。私の方から、「力を抜いて、背中を背もたれに預けてみましょう」とお願いして、はじめて、力を抜いてくれます。こうした方は、緊張体質に傾いている事が多く、その他の筋肉にも、「こわばり」「ひきつり」が起きている場合が多いです。

例えば問診の過程で、まぶたが「ピクピク」痙攣していたら、この体質が確定です。

東洋医学では、五臓の中で、「肝」は、「筋」を滋養する…と、解釈しているので、肝血が足りなくなると、肩こり、ふくらはぎの引きつりなどが出てくるのです。

 

3.「胸脇苦満」で確定

筋肉の過緊張が長く続くと、筋肉も硬くなってきます。常に上半身に緊張が走っていると、肋骨の最下縁部の筋肉が、「鉄板」が入っているように、バリバリに硬くなってきます。

これが、「胸脇苦満」です。(下図の紫色の部分)

患者さんに了解をとって、手のひらで腹診すると、時として、そんなに強く押していないのに、「そこ不快です」「あまり押さないでください」と言う方もいます、

 

こうした体質を抱えている方は、固くなった「肝」をほぐしてあげないと、本質的な改善に至りません。

 

そこで、鍼灸治療で「柔肝」をしていきます。

 

患者さんとの信頼関係が出来ている場合は、医院で針を刺す場合もありますが、患者さんが半信半疑の場合は、「円皮鍼」などをする時もあります。人体の中で、重要なツボは、「肘から下」「膝から下」にある事が多く、衣服を脱がなくても施術が出来る事が多いです。

 

【改善が実感できない方への配穴】

肝気うっ結体質で、気持ちを整えるツボ

手のひらには、下図のように、幾つかのツボがあります。

 

この中で、気持ちをほぐし、ストレスを軽くするツボは、「神門」と「合谷」になります。

●神門は、手のひら側で手首の小指寄りの端にある窪み

●合谷は、手の甲側、親指の骨と人差し指の骨が合流した、盛り上がりのところにあります。

 

ストレスを感じている人は、この2つのツボに針を刺入すると、時として、全身に電気が走るような「響き」を感じる時があります。もし、施術をしてみて、あまり響きが強いようですと、私は、画鋲の様な「円皮鍼」を置鍼する時もあります。(下図参照)

 

もう一つ、足のツボも紹介しましょう。

●太衝は、足の第1趾と2趾の間にある骨が交差するV字の窪みにあり、親指の骨に沿って足首方向になぞると指が止まるところがツボです。イメージとしたら、足の「合谷」と言う感じです。 

 

●足三里は、膝の皿の下、靭帯の外側にあるくぼみ(「犢鼻(とくび)」)から指幅4本分

 

こちらも、円皮鍼を使う時があります。

こうした施術も、口臭治療の一環なので、別チャージすることなく、最初の料金に含まれているので、無料で提供していきます。

 

3回くらい治療を進めると、何となく表情も柔和になり、

「お陰様で、口臭が気にならなくなったよ」と言う評価を頂戴します。

 

東洋医学恐るべし…と言う感じです。